先日、知的財産アナリスト認定講座(特許)第11期の開講のお知らせが、知的財産教育協会から来ていました。
というわけで、今日は、知的財産アナリスト 認定講座(特許)についてです。


知的財産アナリストという資格については、こちらで少し紹介しましたが、今日は、ズバリ、受講するメリットは?費用に見合うのか?という話をしたいと思います*1

まず最初に、念のためお断りしておきますが、この講座を受講して、認定試験を受けて合格しても、AIPE認定知的財産アナリストという名称を使用できるようになるだけで、弁護士試験や弁理士試験のように独占業務があるわけではありません。
従って、受講するメリットは?費用に見合うのか?という点が受講者にとって非常に重要となるのは、理解できます。

というわけで、受講するメリットは?費用に見合うのか?についてです。
今回も、「知的財産アナリスト認定講座(特許)」のガイダンスが開催されます。
もし、参加が可能な方はこちらに参加される、というのも良いと思います。ただ、諸事情でガイダンスに参加できない方もいらっしゃると思います。
残念ながら、私もガイダンスに行ったことがない(行けなかった)ので、ガイダンスに行けない方のために、ガイダンスに行かれた方のブログを紹介したいと思います。

それは、『知財部員を辞めた人のブログ』という企業内弁理士さんのブログで、『知財アナリストの説明会に行ってきました』 と題して、実際に、「知的財産アナリスト認定講座(特許)」ガイダンスに参加され、その感想をまとめてくださっています。

詳細は、上記のブログの記事をお読み頂ければと思いますが、私なりにまとめさせて頂くと、
「この講座の受講生は、権利化などをやるバリバリの知財屋さんというよりも、企画寄りの人が多そう。例えば、知財部で企画(特許分析など)をやっている人や、研究開発部門で特許出願戦略に関わっている人、などでしょうか。
<略>
この講座に何を求めるかは人それぞれだと思いますが、自分も含め多くの人は、知財の分析ノウハウを身に付けることが一番の目的なのではないかと思います。
(知名度が低いので、資格取得すること自体のメリットはほぼ無いかと。)
<略>
あとは、この講座で築くことができる講師や受講生とのネットワークにどれだけ価値を見出すか?というところ。」
の部分の認識は正しく、この理解でほぼ合っていると思います。

そして、少しだけ補足をするなら、このような人たちに対して、リーマンショック後のように、景気が悪くなったり、会社の業績が悪くなったりして、知財に関する予算が減らされるという現実に向き合ったときに、何故、今、知財にお金をかける必要があるのか、経営層に説明するためのノウハウやヒントを多く提供してくれるのが、この知的財産アナリスト 認定講座だと思います*2

また、上記ブログの
知財分析についての一定の方法論を体系的に教えてくれるはたしかに魅力的ですが、この講座でしか教えてくれない秘伝の方法というのは多分無いわけで・・・。
結局、無料のセミナーや市販の書籍などで拾っていけばある程度得られる知識なのかな?という気はしています。
(あくまで、そういう気がするというだけで根拠はないです。)
の部分については、知財分析についての一定の方法論を体系的に教えてくれる、というのは、本講座の最も大きな魅力だと思います。

そして、『この講座でしか教えてくれない秘伝の方法というのは多分無いわけで・・・。結局、無料のセミナーや市販の書籍などで拾っていけばある程度得られる知識なのかな?』の部分については、無料のセミナーではちょっと難しいと思います。いくつかの科目は、有料でないと受けられないではないかなと思いますし、仮に無料で受けられ、書籍で得られる知識だったとしても、やはり体系的な授業とそれに基づく実践、さらには第一線で活躍している講師陣からのフィードバックは無料では難しい、貴重な体験ができると思います。
さらに言うと、懇親会での講師陣への質問やその後のお付き合いなども、受講者の方次第で、メリットの受け方が異なると思います。

さて、ここからが今日の本題ですが、上記のブログでも、
説明会で話を聞いて、この講座に興味をひかれたのはたしかです。
ただ、やはり悩みどころなのは、この講座で得られるものが果たして受講料に見合うものなのか?というところです。
とあり、当然のことながら、費用対効果を気にされています。

この点に関する私個人の意見としては、費用対効果は、正直に言って、受講生の現時点の知識・経験・能力と置かれている立場次第かと思いますが、一般論として、出願権利化関係の仕事をしている人よりも、サーチャー系の方が、そして、サーチャー系の方よりも、知財分析・解析系又は知財戦略・企画系のお仕事をされている方の方が必要な情報を得られると思います*3
講座のレベル感はというと、知財協の2014年度研修「C9A1 特許情報と特許調査(基礎)」や「C9A2 特許情報と特許調査(実践)」よりレベルは上ですし、得るものも多いと思います。

そして、「C9A1 特許情報と特許調査(基礎)」と「C9A2 特許情報と特許調査(実践)」とが、知的財産アナリスト講座の科目4と5にほぼ該当します。
知財協の研修を2つ受けると、6万6千円です。残りの5科目に2万4千円から8万4千円*4の価値があるか?ですが、
科目1と科目7*5は、それぞれ最低でも、知財協の研修1コース分くらい価値はあると思うので、6万6千円くらいの価値は十分あると思います。
ということで、思い切り勝手な数字ですが(笑)、13万2千円以内で受けられるのであれば、費用対効果は悪くないと思います。


つまり、結論としては、受講資格のいずれかを生かして、科目免除を受ければ、受講料は12万円以下になりますので、定量的な観点からは受講する価値がある。ということになります。

と言っても、結構いい金額ですよね。。。
個人で受講されている方が多いですが、仕事として会社が受講費用を負担してくれている方もいらっしゃいました。会社に負担してもらえるなんて、ほんといいですね(笑)。

ちなみに、お知り合いに知的財産アナリストの方がいらっしゃったら、受講を検討しているんだ、と声をかけてみてください。きっと良いことがあると思いますよ。たぶん・・・*6

<ご参考>
知的財産アナリスト 認定講座(特許)
講師紹介
第11期-実施概要
第11期-科目概要
タイムテーブル
オプション「特許マップの基礎講座」


<脚注>
*1 受講するメリットは?費用に見合うのか?ということを気にされている方が多いようなので、レポートしてみました。ちなみに、今日の内容は、2015年2月頃に、Twitterでつぶやいたときのやり取りがベースになっています。
*2 もちろん、これだけではなく、他にも学べると思いますが、私の個人的な感想としては、経営層と如何に会話をするか、コミュニケーションをとるか、ということが重視されている気がします。言い換えると、経営層の興味を引き、知財(の活動)を理解をしてもらうには、どうしたらよいか?ということが重視されていると思います。
*3 明細書をきちんと読んで、出願実務をしている人からみたら、えぇ~、そんなでいいの?(分析にしたことになるの?)という気持ちを持つ方もいるように思います。決して、細部を無視するということではなく、大きな流れや特異点を見つけ出し、方向性を分かりやすく説明する、ということです。もちろん、悪く言えば、経営層に対して、経営層が興味を持つような、分かりやすさを重視する分、正確性に欠けることを(ある種のいい加減さを)許容する、ということも可能です。ただ、それだけ経営層と知財専門職との間に、ギャップがある(場合が多い)ということを気づかせてくれるのも事実です。
*4 今回から『「知財情報解析 基礎」~特許マップの読み方~』というオプション講座が開設されたため、このオプション講座を受講すると、1万5千円+になります。私自身は、この講座を受講したことがないので、内容面のコメントはできませんが、講師は、武藤謙次郎氏で、日経ビジネスOnlineの『知財情報から見える企業イノベーション』において、『サムスンに多くの転職者を出した日本メーカーは?』『IPマネジメントレビュー14号』において『特許情報から見た植物工場ビジネスの今 』を執筆されていますので、こちらをお読みいただくなどして、受講を検討されても良いと思います。
*5 科目1は塚越雅信氏の「企業戦略」、科目7は小林誠氏の「まとめ(ケーススタディ)」です。
*6 前回の第10回は、AIPE認定知的財産アナリストによる紹介者割引がありました。