少し前のことになりますが、職務発明等報奨金に関する税務上の取り扱いについて、国税局の見解がでました。

別紙 職務発明による特許を受ける権利を使用者に原始的に帰属させる制度を導入した場合の「相当の利益」に係る税務上の取扱いについて

国税庁の見解が、年度末(確定申告)前に出され、社内説明がずいぶんと楽になりました。


以前、『職務発明制度Q&A』の紹介をしたときに、本書では、
〇 国税庁から公式に通達は出ていない
〇 法人帰属の場合、すべて雑所得として扱う見解が比較的多数
〇 社内ルールの書きぶりによるので個別に問いあわせ
という解説がなされていることを紹介しましたが、これに関連する名古屋国税局の文書による公式回答*1です。

名古屋国税局は、出願補償金、登録補償金、実績補償金、譲渡補償金の各制度を有することを前提に、所得税、法人税及び消費税の取り扱いについて、おおよそ次のように回答しています。

◎ 所得税
いずれの補償金も雑所得に該当すると考えられる。源泉徴収をする必要はない。
◎ 法人税
出願補償金 特許権(無形固定資産)に準じて特許権の耐用年数(8年)で償却
登録報奨金 特許権の取得価額に算入
実績補償金 収益又は実施許諾料の額を収益の額に計上する事業年度の損金の額に算入
譲渡補償金 譲渡があった日の属する事業年度の損金の額に算入
◎ 消費税
いずれの補償金も課税対象とはならない。


今回の回答は、前提となる事実関係を踏まえてのものであり、使用者原始取得制度を採用するすべての企業に適用できる回答をしたものではない、という評価もあるかもしれませんが、前提事実は、多くの企業にもあてはまる一般的なものであり、このような回答が示され前例ができることで、この考え方がスタンダードになって行くように思います*2

それにしても、やはり所得税との関係で、使用者原始取得制度を採用することにより、各種補償(報償)金が雑所得になり確定申告が必要となると、発明者の負担は以前より大きくなりますね*3


<脚注>
*1 これにより、国税庁から公式の通達が出た、と言って良いのではないでしょうか。
*2 実際、今回の回答に基づいて、当社は税務上の処理を行っています。
*3 以前のエントリーの繰り返しになりますが、立法担当者はもちろんのこと、産業界も含め、立法政策に携わる方々には、より広い視野が必要ということですね。