ビジネスモデルキャンバス②に続いて、ビジネスモデルのための法務知財戦略、ビジネスモデルキャンバス編③です。



『ビジネスモデルキャンバス①』において、『これはビジネスモデルキャンバスが法務の仕事において使えないということではなく、未だ、そのような使われ方がなされていないだけ』という話をしましたが、既にビジネスモデルキャンバスを法務視点で活用しているところを幾つか見つけました*1

例えば、Fairfield and Woods P.C."Legal Aspects of the Business Model Canvas"です。
ここでは、パートナー(Key Partners.)について、次のような記述をしています。
1. Key Partners. – Checklist of types of relationship agreements.
a. Strategic Alliance Agreement – Platform.
b. Strategic Alliance Agreement – Financial.
c. Joint Business Agreements
d. Channel partner/traffic partner agreements
e. Suppliers of goods and services for Key Activities (including those on the cloud).
f. Are the foregoing agreements in writing? Are your damages limited? If information is shared between the company and a partner, is this activity described in your privacy policy – especially early in the customer discovery phase.

残念ながら、法務視点でビジネスモデルキャンバスを利用しようと考えたのは、私が一番ではなかったようですが(笑)、むしろ、私と同じようにビジネスモデルキャンバスの有用性を理解されている方がいて、安心しました(苦笑)。

ただ、"Legal Aspects of the Business Model Canvas"を読む限りでは、①法務的な観点から『リスク』という視点をビジネスモデルキャンバスに取り入れてはいるものの、②知財的な観点から『競争戦略』という視点をビジネスモデルキャンバスに取り入れてはいないように思います。
そもそも、「ビジネスモデルとは、ある領域における持続的な競争優位の獲得を目的とした仕組み」のことですので、ビジネスモデルキャンバスを利用する際に、『競争戦略』という視点は不可欠なはずです。

そういう意味では、まだまだビジネスモデルキャンバスが法務知財的な観点、特に知財的な観点から十分に活用されていないように思います。


ただし、「ビジネスモデルとは、ある領域における持続的な競争優位の獲得を目的とした仕組み」であり*2、それを描くためのツールがビジネスモデルキャンバスであるにもかかわらず、『差別化要素』や『競争戦略』をどのキャンバスで整理・分析し、どのように記述していくのか、この点が少し分かりづらいです。

一応、ビジネスモデルキャンバスでは、
② Value Proposition (価値提案) <VP>
特定の顧客セグメントに向けて、価値を生み出す製品とサービスについて記述する。
において、『差別化要素』や『競争戦略』について、記述することになっています*3が、もう少し意識的に『差別化要素』や『競争戦略』を整理・分析する視点を持たないと、この点の整理・分析が不十分になってしまいます。

この問題を解決するため、ビジネスモデルキャンバスにマイケル E. ポーター教授*4の『Five Forces Analysis』*5を組み合わせて利用します。

~ つづく ~


<脚注>
*1 正確には、日頃大変お世話になっている方から、こちらMILEX "The Legal Business Model Canvas – does your lawyer know it?"を、ご紹介頂きました。
*2 「ビジネスモデル」の定義については、こちらの『ビジネスモデル』において、少し詳しく説明をしています。
*3 『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』23頁では『新奇性』『パフォーマンス』『カスタマイゼーション』『仕事を終わらせる』『デザイン』『ブランド』『価格』『コスト削減』『リスク低減』『アクセスしやすさ』『快適さ/使いやすさ』が整理・分析し、記述する要素としてあげられており、ここで『差別化要素』や『競争戦略』を考えることになっていると言われても、ここから差別化要素』や『競争戦略』を生み出すのはなかなか難しく、フレームワークとして弱いと思います。
*4 Michael Eugene Porter は、ハーバード大学経営大学院教授の経済学博士で、代表的著書である競争の戦略は経営戦略論の古典として今日でも多くの経営者や、経営学を学ぶ学生の間で読まれていると言われています。
*5 ファイブフォース分析とも呼ばれ、業界の収益性を決める5つの競争要因から、業界の構造分析をおこなうフレームワークです。マイケル・ポーターの著書『競争の戦略』で紹介され、広く学会やビジネス界に知られるようになりました。