先日、他社の法務の方から、「どうやって、弁護士さんを探して、選んでますか?」という質問を頂きました。

この質問に対する私の回答は、あまり気の利いたものではないのですが、「自分が優秀だと評価していて、信頼のできる弁護士さんに紹介してもらう。」というものです*1

私がこのように答えると、これまでの経験上、おおよそ、次のような3つの反応が返ってきます。
① この人に聞いても無駄、という表情が一瞬見えたのちに(笑)、「そうですか。」と言って会話が終わる。
② 納得した表情で「なるほど。」といって、会話が終わる。
③ 「なるほど。」と言いつつ*2、「どのような基準で優秀だと評価し、また、信頼できるかどうかを判断していますか?」と会話が続く。

③のように会話が続いたときには、おおよそ次のような回答をしています。
まず最初に、「どのような基準で優秀だと評価するか?」に関して、「正直に言って、これは難しいです。理由は、自分たちよりも専門性の高い人たちの専門能力を評価することになるからです。
ただ、良い弁護士さんを探し、選ぶためのステップというか手順みないなものはあると思っています*3。」

それは、
①法律書や法律実務書を読んで*4、「この先生は優秀そう。」とあたりをつける。
②あたりをつけた先生や気になる先生がセミナーや研修の講師をしていれば、受講し、話を聞いて見る。
③セミナーや研修の内容に、本を読めばわかる以上の内容が含まれていたり、説明が適確でもっと話を聞いてみたいといったことがあれば、名刺交換して*5、講義内容に関連する実務上の悩みについて質問してみる。
④質問の回答が適確で、実務上の悩みの問題解決に繋がりそうな場合は、正式にアポイントをとり、有料で相談をする。
⑤訴訟代理人として選任する場合は、上記に加えて、過去に担当した訴訟を調査し、裁判例を検討し、訴訟代理人として適任かを判断する*6
といった内容のお答えをしています。

何度も言うようですけど(笑)、上記のステップも各ステップ毎に評価が必要なため、自分たちよりも専門性の高い人たちの専門能力を評価するのは難しい、ということに変わりはありません*7

ただ、私は、実は「優秀だと評価できるか?」よりも「信頼できるかどうか?」を重視しています。
理由は、「信頼できるかどうか?」の方が、「優秀だと評価できるか?」よりも評価が簡単であることと、実は、仕事の質を図る判断基準にもなっているからです。

もう少し具体的に説明をすると、「どのような基準で信頼できるか?」を判断しているかというと、私のこれまでの経験を踏まえると、「自分の専門以外の仕事について、断ることができるか。」で判断できると思っています。
理由は、専門外の仕事を引き受けないということは、自分が専門としている分野の仕事には、対価相応のリーガルサービスを提供できているという自信の表れであり、また、相応のリーガルサービスを提供できない場合は、依頼者のためにならないと考えて受任せず、しかも受任せずとも経営が成り立つという推測ができ、このような先生であれば、クライアントにとって信頼に値する先生だと評価できるからです。
自分の専門外だから、という理由で断る先生は、確かにあまり多くないかもしれませんが、それでも、実際にいるものです*8
そして、時には単に断るだけでなく、他の先生(弁護士さん)を紹介してくれることもあります*9
このようにして紹介をして頂いた先生は、基本的に、優秀です。好みや相性の問題がないとは言いませんが、やはり、優秀な先生が自分よりも特定の分野において優れており、薦められると選んでくださった先生は(その分野における専門家として)優秀です。

ところで、実は、この「専門外の仕事を引き受けない。」ということは、信頼できるかどうかの判断基準になっているだけでなく、経験曲線効果から、その先生が特定の分野の専門家として優秀かどうかの判断基準になっていることが理論的に説明できます。
経験曲線効果とは、経験と効率との間の関係を示す経験則で、個人や組織が特定の課題について経験を蓄積するにつれて、より効率的にその課題をこなせるようになることです。経験曲線効果は、規模の経済や範囲の経済とは別の論理で競争優位を構築できます。
つまり、特定の分野で多くの経験を積んだ先生は、問題を効率的に解決できるため、例えばタイムチャージの場合を例に説明すると、経験の少ない先生よりも費用がかからず、また、仮に、同等の費用がかかったとしても、逆に、その分だけ、時間というコストをその問題解決につぎ込むことができており、より良い問題解決がなされる可能性が高まる、ということです。

また、特定の分野において専門家であるという評価が確立すると、より多くの依頼や相談(つまり、情報)が集まるようになり、その問題解決を通じて、より多くのノウハウがたまり、より良い問題解決ができるようになり、専門家としての評価がさらにあがるという正のスパイラルが生じます。
仮に、専門外の仕事を受けてしまった場合、その分だけ、専門外の仕事に時間を消費するわけですから、その分経験が蓄積できず、今度は、上記と逆の負のスパイラルが生じる可能性があります。

というわけで、今回の質問に一言で答えるなら、『「自分の専門以外の仕事について、断ることができる。」「専門外の仕事を引き受けない。」という先生を選ぶと良い。」』ということになります*10


<脚注>
*1 これは、企業法務向けの話であり、一般民事の場合は違うかもしれません。
*2 私が「納得した」と勘違いしているだけで、たぶん、本当は、納得していないケースの方が多いのでしょうね(苦笑)
*3 結局は、ステップ毎に評価が必要なため、評価能力そのものを上げていかないとだめというのは、一面、真理ではあるのですけどね・・・。
*4 たまに、法律書や法律実務書以外の本を書いている先生もいるので、まぁ、そこから「弁護士としても、優秀そう。」と思える何かがあるのであれば、法律書や法律実務書以外の本であたりをつけてもいいかも・・・。ちなみに、私には、そんな才能も経験もありませんが。。。
*5 もちろん、名刺交換は必須ではありません。このご時世、名刺などなくとも、すぐに連絡はつくと思います。
*6 ここでは、単に勝ったか負けたか(勝率)を見るだけでなく、どのような企業の代理人であったか、損害賠償請求を伴う訴訟であれば、いくらで勝ったか、いくらで負けたか、筋の良い(勝てそうな)訴訟であったか、それとも筋の悪い(負けそうな)訴訟であったかといったことを見ていく必要があると思っています。
*7 ここまでくると、これが「難しいことである。」と感じているのが、私だけでないことを祈っています・・・。
*8 私自身の経験においても、数人(片手以内ですが)はあります。ただし、いわゆる4大法律事務所やそれに次ぐ大手に相談に行ってしまうと、事務所内で回されてしまい、事務所を超えて良い先生に巡り会うことはほとんど不可能だと思います。なお、こういった大きい事務所の場合、事務所内で回された結果、経験の浅い先生のみに対応されるというリスクも非常に低いと感じています。
*9「専門ではない。」と断りつつ、こちらが困っていると、「専門ではないですが、私で良ければ。頑張ります。」と言ってくださる先生もいらっしゃいますが・・・。
*10 「なんでもできます。」「なんでもやります。」は、「何もできない。」良くても、「すべてが中途半端」と言われたりしますよね。ビジネスにおいて、よく使われる言葉を使うならば、「選択と集中」です。事業領域だけでなく、製品やサービスそのものにも同じことが言えますので、リーガルサービスも同じかと思います。