『職務発明制度Q&A-平成27年改正特許法・ガイドライン実務対応ポイント』を読んで、改めて職務発明等報奨金の税務について整理することにしました。

先日、その当時得られていた情報をもとに以下の記事をエントリーしましたが、
『新職務発明制度の今後のスケジュールと幾つかの実務上の課題について』では「給与所得」と
『新職務発明制度の今後のスケジュールと幾つかの実務上の課題について②』では「雑所得」と
異なる説明をしているため、結局のところどうなるのか整理をしておく必要があると思ったからです*1

この点、『職務発明制度Q&A-平成27年改正特許法・ガイドライン実務対応ポイント』は、実務上問題となるケースを題材にQ&A形式で簡潔にまとめられており、実務上問題となる可能性がある事項をざっと理解するにはちょうど良い分量だと思います。

さて、本書の結論としては、
〇 国税庁から公式に通達は出ていない
〇 法人帰属の場合、すべて雑所得として扱う見解が比較的多数
〇 社内ルールの書きぶりによるので個別に問いあわせ
となっています。

理由は、以下のとおりです。
平成28年4月1日から施行される平成27年特許法等改正法は、社内規程に基づき、職務発明等を「原始的従業者帰属」から「原始的使用者(法人)帰属」に変更することができます。
これに伴い、職務発明等に係る対価の所得区分が変わります。
これまでと同様に、職務発明等を原始的従業者帰属とする場合は、法人は従業者から「特許を受ける権利」を承継することになるため、従業者の所得税の課税関係を、「これらの権利の承継に際し一時に支払を受けるものは譲渡所得、これらの権利を承継させた後において支払を受けるものは雑所得」としてきました(所得税基本通達23-35共-1(使用人等の発明等に係る報償金等)(1)、「広島国税局の文書回答事例「職務発明等に係る報奨金の所得税の取扱いについて」参照)。
一方、平成27年特許法等改正により、社内規程を改訂し、職務発明等を「原始的使用者(法人)帰属」へと変更した場合、これまでのように従業者から法人に対する権利の承継はなくなり、従業者が得る対価は、所得税基本通達にいう「権利の承継に際し一時に支払いを受ける」ものではなくなったため、現行通達に規定される「譲渡所得」には該当しないことになります。

その結果、従業者等が受けた経済上の利益に対して課せられる所得税の取り扱いについては、原則、「雑所得」になるとのことです。
ただし、例外として、例えば、昇給として対価を支払った場合などは、給与所得になる可能性があるとのことでした*2

なお、少し古い記事ですが、こちらでは、「昇給」にも雑所得で対応、と書かれています。
職務発明が「法人」に帰属で通達改正へ 譲渡所得から「雑所得」に“昇給”で対応でも同様*3
理由は、実務の混乱を避けるため、職務発明に係る経済的利益は、付与の形態にかかわらず、「雑所得」で一本化する、とのことです。

そうなると、やはり、本書が示しているように実際上の取り扱いは、最寄りの税務署に相談して決めるのが良さそうです。

<評価> ☆☆☆☆
(平成27年特許法等改正法に基づく職務発明制度について初めて学ぶ人向け、若しくは概要を把握したい人向けの本として。)


<脚注>
*1 過去のエントリーにも追記をしました。
*2 税務署に相談したところ、「給与所得」との回答があり、実際に「給与所得」として処理したケースがある、と聞きました。
*3 新日本法規出版の法律情報サイトe-houki 『税法最前線』より。