「ザ・ゴール」が大変興味深い内容であり有益だったので、早速、『ザ・ゴール 2 - 思考プロセス』を読んでみました。

『ザ・ゴール - 企業の究極の目的とは何か』は、MOTの授業で副読本になっており、それが今回読んでみようと思ったきっかけと、前回書きましたが、実は、『ザ・ゴール』よりも、『ザ・ゴール 2』の方が良いとTwitter上でフォローさせて頂いている方からお薦めされていました*1

『ザ・ゴール 2』は、副題に「思考のプロセス」とあるとおり、「工場の業務改善のプロセス」に関する本ではなく、むしろ、私のような管理部門で仕事している人にとって馴染みのある、明日からすぐにでも使えるような問題発見と問題解決を行うための「思考のプロセス」に関する本です。2002年に出版された本ですので、(こちらも)今頃?という感じなんですが、正直なところ、こちらの方こそもっと早く読んでおけば良かった・・・、と後悔しています*2

この『ザ・ゴール 2 - 思考プロセス』は、『ザ・ゴール』と同じTOC(制約条件理論)に関する本で、いろいろと学びが多いです。

私なりに本書の要点をまとめると、
「思考のプロセス」とは、「変化を起こし、実行に移すための手法」であって、
①「何を変えるのか」
②「何に変わるのか(どのような姿に現状を変えるのか)」
③「変わる際に生じる問題は何か」
④「どのような準備をして変化するか」
⑤「何をどの順番で行い最終的な変化を起こすか」
のステップに沿って、その答えを導き出すために、
①’現状問題構造ツリー
②’対立解消図
③’未来問題構造ツリー
④’前提条件ツリー
⑤’移行ツリー
というツールを使います。

さて、これを見てお気づきの方もいるかと思いますが、この「思考のプロセス」、
What ⇒ Where ⇒ Why ⇒ How
と分析を行っていく、いわゆる「問題解決」の手法に似ていますよね。
What(何が問題か)、Where(そのどこが問題か)、Why(何故問題か)、How(どのように問題を解決するのか)、というステップです。

この2つの手法を実際に使ってみた私の感想は、「思考のプロセス」の方が全体最適を意識した問題解決方法であるのに対して、いわゆる「問題解決」の手法は個別最適に陥る危険性が高いように感じました。
個別最適、つまり、現場の問題(現場で設定した問題)は解決したが(現場は目標を達成したが)、会社の業績が向上しない可能性が高い、ということです。

「思考のプロセス」の場合、①「何を変えるのか」を①’現状問題構造ツリーを使って判断する際に、今見えている問題は、表面的な問題であり、本当の原因はその(表面的な問題の)奥にあると考えて、それらの原因を遡って考えます。
この遡りを最初のステップで行うとともに、遡りを行う際に、全体最適の観点から本当の原因を探究するため、「思考のプロセス」の手法を使うと、より経営に近いレベルでの問題が設定され、解決されることになります。
他方、いわゆる「問題解決」の場合、何故を繰り返すのは、Whyの段階であり、これは、What(何が問題か)、Where(そのどこが問題か)の分析が終わったあとに行われます。
つまり、何を問題と考えるかの段階で、何故という本当の原因を探究するための遡りを行わず、既に設定された問題に対して、遡って原因分析を行うため、より下位の、より現場に近い原因にたどり着くことになります*3

どちらの手法が良いかは、置かれている環境による気がします*4
例えば、経営に近いレベルで問題発見・問題解決を行う場合は「思考のプロセス」の手法を利用し、より現場に近いレベルではいわゆる「問題解決」の手法を利用することになる気がします。
また、いわゆる「問題解決」の手法を利用する場合は、問題の設定の際に本当の原因探究のための遡りを行わないため、会社の戦略や上位方針が正しいことが前提になっているように思います。
したがって、会社の戦略や上位方針に疑問がある場合は、現場として「思考のプロセス」を利用した方が良い気がしています*5

<評価> ☆☆☆☆☆
(コンサル企業が行う、いわゆる「問題解決」の手法を学ぶ研修に違和感や物足りなさを感じた人に。また、法務部門や知財部門のマネジメント職の方に。)


<脚注>
*1 登場人物が同じでストーリに繋がりがあるため、『2』を読むために(読む前に)、『1(ザ・ゴール)』を読んだというのが、正直なところでした。ただ、もっと早く読んでおけば・・・、というのは、前回書いたとおりです。
*2 2002年の出版当時に読んで、同じような感想をもったか?といえば、こちらは自分自身の業務との関係も深く、まず間違いなく、同じような感想を持ったと思います。ただ、『ザ・ゴール』を読んでから『ザ・ゴール 2』を読んだ方が理解が深まると思いますので、やはり、『ザ・ゴール』を読んだときに、『「工場の業務改善のプロセス」に関する本か。いまいち役に立たなかったな・・・。』と恐ろしい感想を持ち、『ザ・ゴール 2』を読まない、という結論にならないようにする必要がありましたが・・・。
*3 それが一概に悪い、という話ではなく、会社の戦略や上位方針が正しい場合には、現場の改善力が戦略や上位方針と整合し、強い企業になるのだと思います。例えば、トヨタ自動車のように(たぶん)。ただし、会社の戦略や上位方針が間違っている場合には、現場の改善は、無駄な努力となる可能性が高く・・・。
*4 アメリカと日本の企業文化の違いもあるように思います。会社の戦略や上位方針に重きが置かれる米国企業(「思考のプロセス」の手法)とミドル以下の現場力に重きを置く日本企業(いわゆる「問題解決」の手法)という構図かもしれません。若干、ステレオタイプかもしれませんが・・・。
*5 そうなうと「思考のプロセス」の方が汎用性が高いのかもしれません。ただ、確かに、「思考のプロセス」の手法の方が、いわゆる「問題解決」の手法よりもステップが多く複雑な作業が必要なため、まずは、いわゆる「問題解決」の手法を学び活用いて、その後「思考のプロセス」の手法に学び、使いこなせるようになると良いかもしれません。