いわゆるコンサルティングと秘密保持契約の関係が、このところ非常に気になっています(気になり始めてから、もう随分と時間が経ちますが・・・。)。

コンサルティングと言っても、いわゆるコンサルティング会社*1のコンサルティングのことだけでなく、事業会社が行うコンサルティング営業やサービス、ソリューションの提案なども含む広い意味でのコンサルティングです。

例えば、A社がB社にサービスやソリューションを提供する過程において、様々なノウハウ*2を獲得します*3
そこで得たノウハウは、A社の強みとなって、A社のサービスやソリューションを水平展開する際に、他社との差別化要素になり得ます。

さてここで、A社がB社にサービスやソリューションを提供する際に、秘密保持契約を締結していた場合、そのビジネスで得たノウハウ等を、どこまで水平展開の際に利用することができるのでしょうか。

もちろん、秘密保持契約の文言次第なんですが、そんなことを考えながら、秘密保持契約を見ていると、いろいろと疑問が湧いてきます。

疑問を解消するヒントを得るために、秘密保持契約関連の書籍を見ていた中で、凄い本に出合ってしまいました。

それは、事業構想大学院客員教授結城哲彦氏*4『営業秘密の管理と保護』です。
本書は、いわゆる学術書で、秘密保持契約について争われた多数の裁判例を引用しており、秘密保持契約について紛争となった際に、それが訴訟の場で、どのように解釈されるのか予測可能性を示していること、日本法だけでなく、米国法についても触れられており、米国法を準拠法とする秘密保持契約はもちろん、日本法を準拠法とする秘密保持契約であっても、まだ日本では紛争として顕在化していない論点について、一定の指針を与えてくれているなど、これまでにはない書籍だと思います*5

例えば、秘密保持契約に期限の定めなく契約終了後も秘密保持義務が存続する、という内容の存続条項があったとします。
その場合、期限の定めがないので、
①契約終了後、秘密保持義務は存続しない。
②契約終了後、無期限で秘密保持義務が存続する。
③契約終了後、合理的な期間、秘密保持義務が存続する。
④契約終了後、秘密性がある限り、秘密保持義務が存続する。
⑤契約終了後、5年間、秘密保持義務が存続する。
のいずれになるのでしょうか。

本書を読むと、このような論点があることはもちろん、期限を定めないことの問題点とそれに対する考え方(解釈)が示されています。

それにしても、秘密保持契約は、まだまだ詰めるべき論点が多数あり、今後も研究対象として、研究される必要のある分野だと思います。

<評価> ☆☆☆☆☆
(秘密保持契約に関するどの書籍にも、解決のきっかけを見つけることできなかった方が読む本として)


<脚注>
*1 マッキンゼーとか、BCGとか、ベイン・アンド・カンパニー等の戦略系のコンサルティングはもちろん、財務・人事系のコンサルティングファームをイメージしています。
*2 ここでいうノウハウは、不競法上のノウハウよりも広い意味のノウハウをイメージしています。
*3 サービスやソリューションを提供する過程とは、あるサービスやソリューションを提案し、それに対するフィードバックを顧客から受け、再提案する一連の過程を含みます。
*4 著者の結城哲彦氏は、伊藤忠に約36年間在籍したのち、有限責任監査法人トーマツコンプライアンス・法務室長、税理士法人トーマツコンプライアンス・法務室長を務め、79歳10か月で博士(法学)を取得されています。79歳10か月!すごいですね。。。私も頑張らないと・・・。
*5  いつものことですが、もちろん、私の知る限りで、ですが・・・。でも、たぶん、類書はない気がします。。。あったら、是非、教えてください。