前々回、経営戦略ないし事業戦略の観点から見た契約法務のレベルについてのお話をしましたが、今日は、その第5段階である『⑤経営戦略・事業戦略にあった契約書案等の提示』における「一連の契約締結行為の経営戦略や事業戦略との適合性」についての具体的な話です。


以下のような状況設定において、一連の契約締結方針の事業戦略との適合性について検討してみてください。

【設定】
あなたが所属している会社は、従業員数1000名弱のメーカー企業です。
ここ数年の研究開発の成果により、新規事業に関する画期的な技術を開発し、その必須基本特許(権)を日本と米国で複数取得しています。
この新規事業の市場規模は非常に大きくなることが予想され、また、自社には、直接 B to C 事業を行う資本もノウハウもなく、画期的な技術の用途を自社のみで開拓するには限界があります。
そこで、当該技術を利用する市場を速やかに拡大して、自社の売上と利益を伸ばし、さらなる研究開発投資を行うために、B to C ビジネスを行っている有力企業や大企業と戦略的に提携していく必要がある、と事業部は考えています。
ただ、戦略的提携にあたっては、画期的な技術と日本と米国における複数の特許権を抑えているのは自社であり、必須基本特許の改良発明はもちろんのこと、用途発明についても今後も継続的に競争力と差別化要素を維持するため、必須基本特許(その改良発明の特許を含む)と用途特許のいずれもが自社に集約されるビジネスモデルを確立したいとも考えています。

【方針決定】
あなたは、上記事業戦略を踏まえて、次の3段階の契約締結過程を経て、事業化を行うことをビジネスサイドに提案します。
①秘密保持契約
②共同研究開発契約
③共同事業契約

そして、①秘密保持契約では、自社が開示した情報を全て秘密情報とし、秘密保持契約終了後も期限の定めなく、秘密保持義務を負わせる内容の契約書を作成し、
また、②共同研究開発契約では、共同研究開発で生じた特許権等の知的財産を(独占禁止法上の問題が生じないと思われるギリギリのところで、できる限り)自社に帰属させ、また、共同研究開発により生じた成果を利用した事業を行う場合は、自社とのみ行える、または、自社が優先的に共同事業が行えるという内容の契約書を作成し、この条件を受け入れ、共同研究開発契約を締結してくれた企業とのみ共同研究開発を行うという方針をたて、ビジネスサイドにはこの方針に従って粘り強く交渉してもらうことにしました。

その結果、①秘密保持契約と②共同研究開発契約を締結するまでに、平均で、半年から1年程度かかり、なかには、②共同研究開発契約が締結できず共同研究開発に至らない場合もありました。
ただ、そのうち幾つかの企業は、半年から1年後に、改めて共同研究開発の申し入れがあり、自社の条件がほぼ受容される形で共同研究開発契約が締結し、共同研究開発が始まり、共同事業を行ったものもあります。

【評価】
以上を踏まえて、決定した一連の契約締結方針を評価すると100点満点中何点でしょうか。
事業戦略との適合性の観点から評価してみてください。
また、仮に、100点でないとした場合、何が問題で、また、どのような点が不足していたり、考慮されていないことから、減点したのか、その根拠ないし理由を説明してください。

~ つづく ~