先日、法律書や法務知財関連書籍の書評について、どのような考え方に基づいて書籍を紹介し、書評をしているのか、私の考えを整理しましたが、今日は、その第2弾(補足)です。


書評の最後に、入門、初級、中級、上級*1という評価をさせて頂いておりますが、こちらの基準について少し説明をしたと思います。

まず、この入門、初級、中級、上級の区別ですが、おおよそ以下のようなイメージをもっています。

<入門>
先輩社員や上司に教わることが多く、日々の業務を通じて学ぶことの方が多い状態です。
業務では、限定された範囲において、法務上の問題・課題を発見し、そのリスクを説明することができます。

<初級>
学ぶことはまだまだありますが、先輩社員や上司に教わることが少なくなり、自ら相談すべき事項がわかり、適切なタイミングで相談ができるようになる状態です。
業務では、法務上の問題・課題を発見し、そのリスクを説明し、一定条件下では解決策を提示できます。

<中級>
自律的に学び、後輩社員または同僚に教えることが多くなり、他の法務部員から相談を受けることが増えてくる状態です。
業務では、単独で法務上ないし一部の業務上の問題・課題を発見し、そのリスクを説明し、解決策の提示または一部を自律的に解決できます。

<上級>
自律的に学び、部下または後輩社員を教育する先輩社員に教えたり、相談にのったりすることが多い状態です。
業務では、単独で法務上・業務上の問題・課題を発見し、そのリスクを適切に評価して説明し、解決策の提示または解決を主導することができます。

なお、これは、法務業務全般において、ということではなく、当該書籍が前提としている一定の業務範囲において、ということです*2

ちょっと乱暴なところはありますが*3、平均的な法務部員を念頭において*4、その法務部員の業務経験年数が何年くらいであるか?を基準にして、区別すると以下のようになります。

入門 1~2年目 
初級 3~5年目
中級 6~10年目
上級 11年目以上

ようするに、当該書籍を他の法務部員に薦めるとして、その法務部員が当該業務を何年くらい経験しているのか?を基準に、入門、初級、中級、上級と分類をしてみた、ということです。

話は少し変わりますが、たまに「平均的な法務部員」よりも、能力が高いのか、それとも努力の量が多いのか、努力の質が高いのか、「平均的な法務部員」よりも早く知識と経験を身につけて、業務において使いこなしていく人に出会います。
そんな人たちを、私は「優秀な法務部員」と密かに呼んでいます(笑)*5
私が思う「優秀な法務部員」のイメージはだいだいこんな感じです。

入門 〜1年目
初級 2~3年目
中級 4~5年目
上級 6~7年目以上

前述のとおり、上記は、あくまでもある一定の範囲の話であり、法務業務全般の話ではありません。
ただ、ある一定の範囲の業務の質が上がってくると、別の分野の仕事に携われるようになりますので、自然と業務範囲は広がります。
業務範囲の広がりとともに、求められる仕事のアウトプットの質も高くなりますので、法務業務全般の能力の話と全く関係がないわけではないと思います*6


<脚注>
*1 といいつつ、まだ、上級者向けの書評をしたことはないのですが・・・。つまり、まだ私が上級者向け(業務経験10年以上)の書籍について、比較検討できる能力と経験がないことの裏返しです。
*2 例えば、民法に関する書籍なら、民法を業務で使うにあたって、という限定された範囲の話であり、法務業務全般においての区別ではありません。
*3 無理は承知で、頑張って定量化してみました。頑張って定量化する必要があるか?と問われると、たぶん、としか答えられませんが・・・。
*4 「平均的な」というのは、私がこれまでに出会ってきた、いわゆる普通の能力と努力をしてきた法務部員を意味しています。あくまで、私の個人的な経験に基づくものということです。
*5 なお、今回は詳述はしませんが、「優秀な」の上には、「超優秀な」と「天才」がいます。。。せつないな〜(笑)
*6 業界や企業による差(法務業務の範囲の差)がないとはいいませんが・・・。また、知的財産部員も、基本的には、同じですが、知的財産部員は法務部員と比較して、業務範囲が狭く、その分、深いと思いますので、若干能力開発のあり方が異なるような気がしています。