これまで紹介してきた3冊が、何に重点を置いて書かれているか私なりに整理をしてみると、それぞれ次のような点を重視して書かれているように思います*1
酒井美里さんの『特許調査入門 改訂版 サーチャーが教えるJ-PlatPat』はデータベースの特性を、野崎篤志さんの『特許情報調査と検索テクニック入門 - 研究開発&特許出願活動に役立つ』は調査(検索)技術を、東智朗さんと尼崎浩史さんの『できるサーチャーになるための特許調査の知識と活用ノウハウ』は法律(特許法)を、理解し、調査に活用することの重要性を教えてくれるていると思います。
そして、調査対象である発明が、いわゆる技術的なものである以上、これらに加えて、④当該分野の技術を理解することが重要なことは言うまでもありません*2

つまり、最低でも、①データベースの特性、②調査(検索)技術、③法律(特許法)、④当該分野の技術、を理解し、実際に使いこなすスキルがないと、本当に良い特許情報調査はできない、ということになると思います*3

そして、特許情報調査は何のためにしているのか?という本質にさかのぼって考えるならば、それは事業や経営に役立つためですから、事業戦略や経営戦略を理解し、理解した事業戦略や経営戦略を意識して調査を行い、情報を整理する必要があります。
つまり、⑤事業戦略・経営戦略の理解、も必要になるということです*4

これらの全てを、プロフェッショナルレベルで理解して実践することは至難の業です。
それに、知財は、特許だけではありませんし、知財以外の、いわゆる非特許情報(非知財情報)の活用も重要です。
したがって、事業や経営に本当に活かせるレベルでこれらの仕事をしようと思えば、組織として対応するというのが、現実的な対応になると思います。
そうすると結局のところ、組織構築能力も重要、ということになりそうです*5


<脚注>
*1 私なりに、重点的に書かれていると思われる部分、特徴的な部分を一言でまとめ、強調してみました。間違っていたら・・・、ごめんなさい。。。
*2 「技術の理解」だけでなく、「技術の目利き」まで要求されると・・・、素質のある一握りの方でないと、無理なのではないでしょうか。。。
*3 やっぱり、外部委託しようかな・・・(笑)。
*4 事業戦略や経営戦略の立案を中心的な立場で行うことまでは不要かと・・・。でも、事業戦略や経営戦略を立案する人達が、特許(知財)情報を意識していない場合は、少なくとも、事業戦略や経営戦略の立案の支援は必要になりそうです。
*5 企業の知財力、とでもいうのでしょうか。知財部が組織として充実しているだけでなく、知財を事業戦略や経営戦略を実現する手段の一要素と位置付けて、全社的に活用できる組織が、やっぱり強い組織なんでしょうね。