職務発明規定等を改正するための「特許法等の一部を改正する法律案」(以下、「平成27年改正法」という。)が、7月3日に可決、成立し、7月10日に法律第55号として公布されました。

これまで、(新)産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の議論については、当ブログでもフォローしてきましたが、いよいよ平成27年特許法改正で新しい職務発明制度が導入されます。

今日は、幾つかのルートから入手した新職務発明制度に関する情報のまとめです。

まずは、今後のスケジュールですが、施行は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日となっていますので、平成28年7月9日までに施行されます*1
そして、皆さんも注目されている、新特許法35条6項に定める指針(以下、「ガイドライン」といいます。)は施行前に公表されるとのことですが、公表前に経済産業大臣は、産業構造審議会の意見を聞く必要があります(平成27年改正法新35条6項)。
現在のところ、9月から産業構造審議会が開催され、おそらく立法担当官の改正法解説が年内に出されることから、これに合わせて、年内にガイドライン案が完成し、公表される予定とのことです。
おそらく年内から年明けにかけてパブリックコメントに付されると、おそらく来年の4月1日ないし7月1日に施行されることになるのではないでしょうか*2

続いて、新職務発明制度に関する幾つかの論点についてです。

① 3つの制度
平成27年改正法による新職務発明制度が施行されても、平成16年特許法改正と旧法(平成16年改正前)の3つの制度*3が、併存することになります。
いずれが適用されるかは、発明の完成時点で決まります。

② 承継取得制度と原始取得制度*4の併存
承継取得制度と原始取得制度の併存させることは可能です。
例えば、部門毎はもちろんのこと、技術分野・テーマ等で承継取得制度にするか、原始取得制度にするか、それを選択することができます。

③ 発明届出方式と原始取得制度
原始取得制度、すなわち発明は原始的に使用者が取得するという制度においても、発明が生まれた場合に、従業員が使用者等に発明が生まれたことを届け出、使用者等が事業に必要と判断した発明についてだけ会社が(原始的に)取得するという方式を採用することも職務発明規程においてその手続きを定めることで可能となります。
また、原始取得した特許を受ける権利について、使用者等がその権利は不要と判断した場合、発明をした当該従業員にその権利を返還(原始取得であることから、正しくは譲渡)できるという方式を採用をすることも職務発明規程においてその手続きを定めることで可能となります。

④ 相当の利益について
名誉的利益(社長表彰等)は、相当の利益に該当しません。
人事考課においての考慮、発明者の研究環境の改善、海外留学機会の付与、発明者への賞与の増加等については、いずれも基本的には、相当の利益に該当することになります。
ただし、本当に従業員の利益になっているのか、これらの措置が具体的にどの発明に対する相当の利益として与えられたものなのか、その関係性を見える化することが必要になります。

⑤ 税務上の取り扱い
平成16年特許法改正による職務発明制度の場合、出願報奨金は特許を受ける権利の譲渡対価であるため「譲渡所得」として、また、登録報奨金や実施報奨金は、権利の移転によって一時に実現したものではないため譲渡所得には該当せず「雑所得」として取り扱われています。
これに対して、平成27年改正法における「相当の利益」は、発明に対する報酬であり、それは職務ないし業務に対するインセンティブであるため、「給与所得」になると考えられます。
「給与所得」ということになれば源泉徴収がされ、手取額が減ります。
さらに企業側は、これまでは消費税法においても課税仕入れに含められていたものが、課税仕入れにならなくなるため、消費税の支払いが増えます*5

* この点、2016年3月19日の「新職務発明制度の今後のスケジュールと幾つかの実務上の課題について②」の「⑦税務上の取り扱い」において紹介したとおり、報奨金の税務上の取り扱いは、「給与所得」ではなく、「雑所得」となるようです。

以上、平成27年改正法の文言に基づいて、考えられる幾つかの論点と現時点での考え方です。
引き続き、今後公表される立法担当者の解説やガイドライン等で確認していく必要があります。


<脚注>
*1 期間の計算、あっていますよね・・・。
*2 これは、あくまで私の予想にすぎません。。。
*3 平成27年特許法改正による新職務発明制度、すなわち、選択的原始帰属の制度を採用しない場合は、これまでどおり2つの制度になります。
*4 (新)産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の議論では、特許を受ける権利が使用者等に原始的に帰属するか、という問題意識でしたので、原始帰属制度という名称が適切かと思いますが、平成27年特許法改正では、「取得」という表現が使用されているため、原始取得制度という名称を使用しています。
*5 国税庁としては、税収が増える方向になりますので、おそらくこのように考えてくるはず、というのが大方の予想のようです。