今日は、企業における法務の仕事(内容)についての簡単な説明です。
実は、今日は別のことをお話しようと思っていたのですが、その前提として、簡単にでも法務の仕事内容についてのお話をした方が良いなと思い、今日はこのお話をすることにしました。


まず、企業における法務の仕事といっても、その仕事の全てを法務部とか法務チームとか法務グループとか、企業において法務の名称がつけられている部署が行っているとは限りません。
企業によっては、法務とは別の部署やそのための専門部署がその仕事を行っていることもあります。
また、様々な理由から、その仕事を組織として行っていないこともあります。

従って、今日説明する仕事が、当該企業のどの部門においてなされているかは、その企業毎に確認をする必要がありますし、そもそもその仕事をしない企業もあります。そして、このことは、固定的なものではなく職務権限の変更や組織変更、企業の置かれている立場等によって変わることがあります*1

それでは、企業における法務の仕事の紹介です。
その前に、前提として。
法務という名称のとおり、法律に関する実務を行うのが法務の仕事になりますが、企業活動が社会性を有するものである以上、法律と無関係な企業活動というものはありません。
従って、(当たり前のことですが)ビジネスサイドも法律と無関係に仕事しているわけではありません。

つまり、法務の仕事は、ビジネスサイドの法律の理解や実際の業務がどのくらい法律を踏まえたものになっているかなどに合わせて、法的なアドバイスをしたり、実務のサポートをしたり、場合によっては全くしなかったり、ときには法律という一応の根拠というか、バックグラウンドを活かしつつ、社内においてビジネスのアドバイザーとなるなど、コンサルティングのような仕事をすることもあります*2

以上を踏まえて、具体的にどのような仕事があるかといいますと、ここでは、次の10の仕事に分けて説明してみたいと思います。
①契約法務、②機関法務、③法務相談、④紛争訴訟対応、⑤法制度調査、⑥法律事務所対応、⑦コンプライアンス、⑧社内規程、⑨行政機関対応、⑩公共政策

以下、ひとつずつ、簡単に説明をしたいと思います。

①契約法務
まず最初は、たいていどこの企業でも、法務という名称がつけられた部署が行う契約書の作成や審査(レビュー)を行う仕事です。いわゆる法務部門のメインの仕事であることが多いと思います。
すべての契約書の作成やレビューを行うかというと、この点は企業によって異なります。
全件法務で作成・審査(レビュー)する企業もあれば、ビジネスサイドに一定の権限移譲をしているところもあり、知財関係の契約書は知財部門が作成や審査(レビュー)をするという企業もあります。
なお、契約交渉の場に、法務部門が同席するかどうかというのも、企業によって異なります。個人的な感覚としては、原則として、契約交渉の場には法務部門が同席しない企業の方が多いように思いますが、最近は、法務部門の人員の増強に伴って法務部門が同席する企業も増えてきているように思います*3
また、このようにして締結された契約書の管理を法務部門が行うことが多いように思います*4

②機関法務
取締役会の事務局、株主総会の事務局など会社の機関の活動が適法に行われるように運営する仕事です。
この仕事は、会社法を中心とした法律知識が必要な仕事ですので、契約法務と並んで、法務部門のメインの仕事になるはずですが、企業規模が大きい場合や上場している場合などは、法務の名称のついた部門ではなく、総務系の部門(総務部や管理部など)が行うこともあります。
なお、機関法務という会社法を中心した法律知識が必要な仕事であることから、グループ企業の組織再編やM&Aなども機関法務系の仕事として、また、株式上場などの仕事も機関法務系の仕事として、法務部門が行う仕事になることがあります。

③法務相談
自社が行う活動に関連する法律相談を受ける仕事です。
民法や会社法といった基本的な法律の他に、企業の活動内容によって理解が必要となる法律は異なりますし、また業界や業種によって適用される業法など様々な法律に関する相談があります。
ただ、全ての法律に関する相談を受けることが法務部門の仕事かというと、そうでない場合が多いと思います。
例えば、他の管理系部門がある場合、労働法関係は人事部門、税務関係は経理・財務・税務部門、知財法関係は知財部門と言った感じです。また、輸出入関係や業法など、ビジネスサイドに詳しい部門がある場合もありますので、就職の際には、自分の得意な法領域を法務部門が取り扱っているかどうか確認する必要があります。

④紛争訴訟対応
クレームやトラブルなどから、紛争が生じた場合に、紛争解決のための対応をする仕事です。
通常は、訴訟などの法的な紛争解決手段を選択する(または選択される)可能性が高まってから、法務部門の仕事になる、という企業が多いように思います*5
具体的には、法律事務所の弁護士さんと連携して訴訟準備や訴訟対応をする仕事です。自社が訴訟によって達成したい目的は何かを意思決定し、または意思決定された内容を弁護士に伝え、その目的を達成するためにどのように訴訟を遂行し、どのようなときに訴訟遂行を止めるのかを弁護士さんと協議しながら訴訟を進めていきます。
また、社内の訴訟に関係する方々から証拠を集め弁護士さんに渡したり、証人尋問の準備をするなど、社内において訴訟で必要となる準備をします。
なお、訴訟費用(予算)を確保して、法律事務所と弁護士費用等の訴訟にかかる費用について調整(交渉?)するのも法務部門の仕事です。

⑤海外法・法制度調査
企業活動のグローバル化に伴って、必要となる海外の法律や法制度を調査する仕事です。法務相談の一種ではありますが、国内の法律や法制度の調査とは情報の入手の困難さが違うため、あえて別項目にしました。
海外法・法制度調査は語学力が要求されるため、それなりに大きな企業ですと、国内法務と海外法務に組織が分かれている場合もあり、その場合は、海外法務担当の部署に配属されないと、仕事として海外法・法制度調査をする機会がないこともあります。この点、国際契約も同様に組織が分かれてしまうことがあります。

⑥法律事務所関係
法律事務所を選定し、弁護士さんに適切に業務を依頼する(依頼できるように関係を構築する)仕事です。
少し具体的に説明をすると、近年、法令順守意識の向上や案件の複雑化が増しているため、国内はもちろんのこと海外の法律事務所についても、専門性の高い法律事務所を探し、依頼できるような関係を構築する必要があります。
コンフリクトが無い(先に競合の会社や係争相手から依頼されていない)ことを確認し、コンフリクトが無いことが確認できた場合には、どのような案件の専門性が高いのか、その能力を評価し、また費用は能力い見合った適正なものか等を調査して、案件に応じて適切な法律事務所や弁護士に業務を依頼し、または依頼できるような関係を築くという仕事です。
自分たちよりも専門性の高い人たちの専門能力を評価するという、ある意味難易度が非常に高い仕事です*6

⑦コンプライアンス関係
コンプライアンス、すなわち法令順守ができる組織や体制を構築する仕事です。
具体的には、コンプライアンスに関する社内研修や教育を行ったり、相談窓口を設けたり、内部通報制度を設けるなどの組織や体制の構築・整備をする仕事です。
なお、近年のコンプライアンス意識の高まりから、それなりに大きな企業ですと、法務部門とは別にコンプライアンス担当の部門がある場合もあります。

⑧社内規程関係
社内ルールを整備する仕事です。
それなりの大きさの企業ですと、社内ルールが社内規程という形で明文化されていることがあると思いますが、このような社内ルールを明文化する仕事です。
また、制定された社内規程を法改正に合わせて、改訂する仕事もここに含まれます。例えば、個人情報保護法改正に合わせて個人情報保護管理規程を改正したり、不競法の改正に合わせて、秘密管理規程の改訂をしたりという仕事です。
この仕事は、法務部門がすべて行うのではなく、各部門が必要となる社内規程の原案を作成し、それを法務部門がレビューするか、すべて各部門に任せてしまうかなど企業毎に異なっており、必ずしも法務部門の仕事ではない企業もあります。
例えば、分かりやすい例でいいますと、就業規則は人事部門、といった感じです。

⑨行政機関関係
行政機関に必要な許認可を得たり、必要な届け出をする仕事です。
法務部門関連ですと、登記など法務局への届け出がすぐに思い浮かびます。
ただ、個人的な感覚としては、この仕事も法務部門がすべて行うのではなく、各部門が必要となる許認可や届け出を行うことになっている企業の方が圧倒的に多い気がしています。
例えば、労基署等への届け出など人事関係は人事部門、税務署関係は経理・財務・税務部門、特許庁関係は知財部門、その他、行政機関から必要な許認可を得なければビジネスを行えない場合は当該事業部門が行政機関に許認可や届け出を行うことがほとんどだと思います。なお、ビジネス部門が許認可や届け出を行う場合は、法律面から法務部門がアドバイスをすることもあります(法律部門にそのようはスキルやノウハウが無い場合はできませんが・・・。)。

⑩公共政策関係
業界団体でのロビイスト活動やパブリックコメントの提出、政府の各種審議会や委員会の委員活動、パブリックアフェアーズ、議員立法への働きかけなど、公共政策や法制定・法改正に影響を与える仕事です。
基本的には、業界を代表するよう大企業や有名企業に属していないと、このような仕事をする機会はほとんどないと思います。
ただ、実際に、このような活動によって、立法や法改正が行われることも多いため、自社のビジネスに影響のある業界団体の法務や知財系の会合に出席したり、政府の各種審議会や委員会の議事録や報告書等には目を通して、予め法改正に備える仕事は、企業規模の大小を問わず法務部門の重要な仕事です。

以上、法務部門の仕事となりうる10の仕事について、概要を説明してみました。
なんとなくでも法務部門の仕事についてのイメージが湧いていると良いのですが・・・*7


<脚注>
*1 やりたい仕事ができる法務に配属されて喜んだのもつかの間、その機能が別の部署が担うことになり、自分は担当できなくなったり、そもそもやりたい仕事を行う部署がなかったのに、自ら手をあげて、その機能を担う部署を創設したりと、思い通りにならないこともあれば、思い通りになることもたまにはあり、また想像を超えて恵まれた環境になることも極稀にあったりもするのが、普通の雇われ人が属する社会だと思います。
*2 これは、個人の資質や企業が法務に求める役割次第で変わってきます。弁護士のように法的なアドバイスさえしてくれれば良い(ビジネスには口を出すな!)、という企業(ビジネスサイドの担当者)から、弁護士とは異なるのだから、法的なアドバイスだけではなく、ビジネス上どのように対応すべきかまでアドバイスしてくれ(ビジネスにまで口を出してくれ、ついでに責任もとってくれ!!)という企業(ビジネスサイドの担当者)まで、さまざまです。
*3 契約交渉に法務が同席することにはメリットもありますが、デメリットもあります。基本的には、間接部門である法務の人員を何人くらいし、どこまで契約交渉に同席させるのが、費用対効果が高いか?という問題と、ビジネスに対する責任部署が曖昧になる、という問題があります。詳細は、また別の機会に。。。
*4 契約書の管理を法務が行うか、それともビジネスサイドで行うか?という問題があります。個人的には、契約書を紛争時の利用するもの、と考えれば法務で管理すべきということになり、契約書は日常のオペレーションで利用するもの、と考えればビジネスサイドで管理すべきということになると考えています。従って、紛争が多いか、日常のオペレーションに必要か、といった観点から企業毎に管理の主体を考えれば良いと思います。
*5 こじれてしまってから法務が関与すると、訴訟で不利になることがあるため、より早期に法務が関与する企業もあります。
*6 何故なら、人は、自分が理解できる範囲でしか、理解できないからです。つまり、能力の低い人が、能力の高い人を評価するというのは、評価される人の能力が高ければ高いほど、理解が難しくなるため、適切に評価することができないのが、通常だからです。
*7 法務実務を全く見たことが無い人たちに、文章だけで、それも私の文章能力で、どこまで具体的なイメージを持ってもらえたのか、そして役に立てのか、不安です・・・。