先日お話をしたとおり、今年度は経営(学)について学ぶことになりました。

これまで、経営(学)についてはきちんと学んだことがないので、今後のベンチマーク(基準)としての機能を果たしてもらうことを期待して、『経営学入門【上】(第2版)(日経文庫)』を、経営(学)の基本書として選びました。




コマ切れの時間を使って、本書を読み進めていますが、かなり面白いです。
本書では、経営学を『組織論』と『戦略論』の二つの柱からなる学問領域と設定して、この二つの柱に従ってシンプルに体系化をしています。
そのため、論理構成がすっきりしており、かなり読みやすい本で、かつ、全体を整理する視点を持つための入門書としては、かなり優れているように思います*1

まず最初に、第1章「経営学とは何か」において、本書が対象とする経営学について概観したのち、第2章「組織行動論(ミクロ組織論)」、第3章「組織理論(マクロ組織論)」と『組織論』の説明を行った後に、第4章「経営戦略論」として、経営戦略の説明をしています*2

本書の中で、色々と知らない言葉があり、勉強になりました。
また、日頃使ってはいるものの、正確に理解できていたか怪しい言葉も分かりました。
例えば、目標管理などで使ったりしていますが、その意味をきちんと整理をできていなかったなと改めて感じたのは『MOGST』です。

『MOGST(モグスト)』とは、
M=Mission(使命)
O=Objective(目標)
G=Goal(目的)
S=Strategy(戦略)
T=Tactics(戦術)
の頭文字を並べたものです。
使命のさらに前に、V=Vision(ビジョン)を位置付けて、これを強調する考え方もあるそうです*3

このことから分かることは、Strategy(戦略)を決定する前提として、Mission(使命)、Objective(目標)、Goal(目的)という目指すべき将来像がある、ということです。
そして、Strategy(戦略)も重要だが、Strategy(戦略)を決定する前提となる、Mission(使命)、Objective(目標)、Goal(目的)は、より重要だということです。

このことは、先日の『SWOT分析と知的財産戦略①』において、戦略を立案する際にSWOT分析をすることになりましたが、最初に、①何ために?という目的についてのプロジェクトメンバーの認識を一致させていなかったため、いきなりSWOT分析を始めても戦略の立案が上手く行かなかった、ことを裏付けているように思います。
当たり前、と言えば当たり前のことですが、きちんろと理解して、それを身につけていなければ、実践の場で使いこなすことなどできるはずもなく、かえって混乱の元になってしまう、という実例だったように思います*4
個別に戦略フレームワークを学んだだけではダメで、一連のプロセスにおいて、それをどこで利用し、それを利用する際の注意点は何かを知っておく必要があり、経営学を体系的に勉強をすることの利点は、こういうところにもあることを実感しました*5

<評価> 
『経営学入門【上】(第2版)(日経文庫)』 ☆☆☆☆☆
(経営学の入門書として、全くまたはほとんど経営学を学んだことが無い方にとって。)


<脚注>
*1 他と比較できるほど、経営学の本を読んでいるわけではないので、今のところ、経験に基づく直感(=主観?)の域をでませんが・・・。
*2 これは私の推測にすぎませんが、このような構成は、著者の榊原清則教授が、経営学においては、組織論、すなわち、人の問題を重視していることの表れなのかな?と思いながら本書を読みました。
*3 しかしながら、『VMOGST』とは、言わないようです・・・。
*4 こういう聞きかじり程度の理解で、経営(学)を分かった気になって、実務で使った結果、上手く行かなかったことを捉えて、だから「理論(学問)と実務(実践)は違う!」なんて、早急に結論づけることだけは避けたいものです。
でも、ありがちですよね・・・。特に、実務で(幸運にも?)良い結果や実績を残している人に。。。
*5 これは、法律(学)でも同じですね。個別に法律の知識を持っていても、おおまかにでも法制度を知っておかないと、少なくとも、関連する法律間の関係を知っていないと、実際に実務で使いこなすのは難しいです。