6月19日の知的財産戦略本部会合において、「知的財産推進計画2015」が決定されました。
会合で検討された「知的財産推進計画2015」(案)はこちら


第1部「重点3本柱」、第2部「重要8施策」の2部構成になっています。

具体的には、以下のとおりです。
第1部 重点3本柱
1.地方における知財活用の推進
2.知財紛争処理システムの活性化
3.コンテンツ及び周辺産業との一体的な海外展開の推進
第2部 重要8施策
1.世界最速・最高品質の審査体制の実現
2.新たな職務発明制度の導入と営業秘密保護の強化
3.国際標準化・認証への取組
4.産学官連携機能の強化
5.デジタル・ネットワークの発達に対応した法制度等の基盤整備
6.アーカイブの利活用促進に向けた整備の加速化
7.国際的な知的財産の保護及び協力の推進
8.知財人財の戦略的な育成・活用
なお、概要はこちらでまとめられています。

さて、重点3本柱のうち、1の「地方における知財活用の推進」については、「地方における知財活用促進タスクフォース」が2015年5月28日に報告書を、また、2の「知財紛争処理システムの活性化」についても、「知財紛争処理タスクフォース」が、こちらも2015年5月28日に報告書を出しています。

このうち、「地方における知財活用の推進」では、中小企業の知財戦略を強化するために、大企業・大学と地域中小企業との間の知財連携を促進することによって、地方におけるイノベーション創出を実現して地方経済を活性化させるため、
1)中小企業の知財戦略強化
2)中小企業による大企業の知財活用促進(産産連携)
3)中小企業による大学の知財活用促進(産学連携)
の3つの分野について議論を行っています。
中小企業の知財戦略強化というのは、日本の経済・社会にとって非常に重要な喫緊の課題であり、かつ、本当に難しい問題だと思います。
とにかく、お金がない、人もいない、(場合によっては、知的財産もない(?))ところからスタートする場合もあります。。。*1

それでも、考え方の基本は同じです*2
きちんとした経営戦略ないし事業戦略を立て、それを実現するための知財戦略を立てる*3
つまり、経営戦略ないし事業戦略の立案に際して、知財活用の視点を生かし、立案された事業戦略における差別化要素や競争優位性を知財を活用して、どこまで持続させることができるかを真剣に検討し、議論することが不可欠です。
業界、業種、企業規模、置かれている立場は違っても、その中で自社が中長期的に成長・発展するために必要な手を、先手先手で打っていくことに変わりありません*4
問題は、知財戦術活動への落とし込み方に、色々と工夫が必要ということだと思うのですが・・・。

この点は、早く、こちらの続きを書かないといけないのですね・・・。


続いて、「知財紛争処理システムの活性化」ですが、こちらは多かれ少なかれ実務への影響がありそうです。

<<知財紛争処理システムの機能強化>>
(知財紛争処理システムの機能強化に向けた検討)
・我が国の知財紛争処理システムの一層の機能強化に向けて、権利者と被疑侵害者とのバランスに留意しつつ、以下の点について総合的に検討し、必要に応じて適切な措置を講ずる。
‐証拠収集手続について、侵害行為の立証に必要な証拠収集が難しい状況にあることに鑑み、証拠収集がより適切に行われるための方策について検討する。
‐損害賠償額について、グローバル市場の動向を視野に入れつつ、ビジネスの実態を反映した損害賠償額の実現に向けた方策について検討する。
‐権利の安定性について、我が国産業のイノベーション創出に向け、権利の付与から紛争処理プロセスを通じた権利の安定性を向上させる方策について検討する。
‐差止請求権の在り方について、標準必須特許の場合、PAE による権利行使の場合について、特許権の価値に与える影響も考慮し、検討する。(短期・中期)(「知的財産推進計画2015」(案)18頁)

これだけだと、具体的に、どのようになるのか分かりにくいと思います。
もう少し具体的なことが知りたい場合は、「知財紛争処理タスクフォース」の報告書に、「知的財産推進計画2015」(案)が作成される前段階の議論が書かれていますので、こちらが参考になると思います*5

私なりに要約すると、
1.証拠収集手続
①具体的態様の明示義務に係る手続の機能強化(特許法104条の2)
②侵害行為に係る立証の容易化(特許法105条)
③秘密保持命令制度の見直し(特許法105条の4)
2.権利の安定性
我が国産業のイノベーション創出に向け、産業政策上の観点を反映した進歩性水準の判断が重要であることに留意し、権利者と被疑侵害者とのバランスを確保する観点から、無効の抗弁(特許法104条の3)の手直しを含めて権利の安定性を確保する。
3.損害賠償額
①特許法102条各項の見直し(特許法102条各項の利用の促進及び算定額の引上げ)等
②寄与率に係る見直し
③より手厚い救済に向けた損害賠償規定の見直し(民法の不法行為の枠から一歩踏み出すことにより、侵害を救済し、侵害を抑止するように、損害賠償額を引き上げる具体的な方策を検討する。)
4.差止請求権
標準必須特許に関わる権利行使の制限やPAEによる過度な差止請求権の行使を抑制するための方策に関して検討する。
といったところでしょうか。

職務発明に関するガイドラインとともに、引き続き議論をフォローしていく必要がありそうです。

<脚注>
*1 中小企業政策における基本的な中小企業の定義は、こちら
*2 考え方の基本、つまり、知財戦略の立案までの方法論は同じですが、どこまで知的財産ないし知的財産権を活用するのか、それどのように日常のオペレーションに落とし込んでいくか、が大企業と中小企業ではもちろんのこと、大企業と中堅企業でも、大きく異なると思います。
なお、中堅企業については、こちらが参考になります。
*3 そもそもきちんとした経営戦略や事業戦略を立てることが難しいわけですが・・・。
*4 きちんとした経営戦略や事業戦略を立てられなければ、どんなに優れた知財戦略を立案し、実行しても、支えられる側の事業戦略がダメなら、結局、事業もダメになってしまい、知財戦略への投資が無駄になってしまいます。
*5 といっても、問題提起レベルです。それでも、有識者の問題意識を理解することはできると思います。