以前、こちらで紹介をした『希望は天上にあり』において、先日の『三位一体の戦略①』と『三位一体の戦略②』を踏まえて、弦音なるよさんが、より整理された分かりやすい記事を書いて下さっています。


こちらが該当の記事です。
『ドメイン戦略・資源戦略・競争戦略の視点からみた知財活動の整理と、価値の可視化』

弦音さんは、以前、私が「テクニカルシンギュラリティ」*1に関して書いたときにも、分析的な視点を設定して*2、非常に分かりやすく整理をしてくれていました。

今回の『三位一体の戦略』についても、弦音さんは、以下のような整理の視点を設定をしています。
さて、知財の立場から考えてみる。知財活動として行うべき仕事は様々あるが、その目的はクライアント事業のサポートにあるはずだ。ここで視点をクライアントサイドの戦略に置き、クライアントの意思決定をサポートする活動として知財業務を整理しなおすと、その意義を再確認できることもあるかもしれない。

私は、「視点をクライアントサイドの戦略に置き」というのが非常に重要だと思っています。
というのも、間違った戦略に基づいて、その戦略を実現するために、如何に素晴らしい知財戦術を駆使しても、行きつく先は利益のでない、不毛な競争が待っている可能性が非常に高いからです*3

そのうえで、
クライアントの戦略(=意思決定)は上述の通り、ドメイン戦略、資源戦略、競争戦略に分節できる。知財活動をこの3つの戦略それぞれに対応させて説明することで、知財は「あなたの戦略」「あなたの意思決定」のここに効くんですよ、と、価値をより分かりやすく伝えられるという仮説だ。
ということで、3つの分節された戦略に対して、どのように知財活動を説明できるかまとめてみた。
として、『戦略』に効く『知財活動』を説明されています。

私の経験上、経営層と話をするときや予算取りの際には、細かな知財戦術(「戦略」ではなく「戦術」)の話より、自社の競争力がどのように強化されるか、を説明する方が話が早いです*4
要するに、「知財活動は投資である。」という立場に立って、この投資をすることで、どのくらいのリターンが見込まれるかを説明することが大事、ということです。

また、弦音さんは、
まとめてみると、知財に詳しい人には今さらかもだけど、私としてはちょっと新鮮だった。特に資源戦略に類する活動の多く、例えば他社特許調査などは、今回まとめるまでそれが資源戦略の一環になるとは気付かなかった。
と書かれていますが、「知財に詳しい人には今さらかもだけど」って、そんなことはないと思っています*5

「他社特許調査って、何のためにするの?」って知財に詳しい人に聞くと、たいてい*6、「他社の権利侵害回避のため。」って答えるのではないでしょうか?
『知財活動』が『戦略』、それも『ドメイン戦略』『資源戦略』『競争戦略』という『3つの戦略』に影響を与える、というレベルで考えて、活動していいる人は少ないように思います*7

それにしても、弦音さんブログの説明は、私のブログの説明より、よっぽど整理されていて、分かりやすいですね。
文才?整理能力?そもそもの地頭?の違いなのか、それともそれら全部の違いなのか。。。
私ももっと分かりやすくブログを書かなくては、と弦音さんブログを見るたび、反省しています。


<脚注>
*1 テクニカルシンギュラリティと契約法務①  
*2 テクニカルシンギュラリティと契約法務④
*3 ようするに、「方向性が間違っている努力」「報われない努力」「無駄な努力」ということです。
*4 「知財活動は投資」ですので、可能であれば、どのくらい利益があがるのか、を説明できるとさらに良いです。
*5 私の(狭い?)経験の範囲内に基づく評価ですが。。。
*6 「たいてい=100人中97人くらいの人」という感覚です。もちろん、これも私の(狭い?)経験の範囲内に基づく評価ですが。。。
*7 『戦略』に影響を与える、というレベルで考えて、活動できる企業人って、通常は、経営戦略や事業戦略を構築するビジネスサイドの人ですから、この方たちと一緒に仕事ができて、かつ、影響を与えることができる法務部員や知財部員の数が少ないというのは、想像に難くないと思います。