定期購読しているBUSINESS LAW JOURNAL(ビジネスロー・ジャーナル)2015年07月号から私が興味を持った記事のメモです。

先月号の私が興味を持った記事で*1、『「民法(債権関係)の改正」については、中間試案よりも改正項目が減ったとはいえ、他の法改正に比べると多岐にわたるため、これだけでは情報が少ない気がします。』なんてコメントをしたら、早速、今月号の特集は、『民法改正の評価・影響・対応』ということで、34頁を割いて解説を行っています。
先月号、今月号と徐々に「民法(債権関係)の改正」についてキャッチアップをして、まとまった書籍が発刊されたら、最終的には、その書籍で整理を行いたいと思っています*2

さて、注目記事は、先月号に続いて、長島・大野・常松法律事務所の松田弁護士の『ライセンス契約法』です。

今回は、「第5回 ライセンシーの権利と保護(2)- 残されている問題」というタイトルで、特許ライセンス契約に当然対抗制度を導入することになった背景事情や問題点が、商標ライセンス契約と著作権ライセンス契約についてもあることを指摘しています。
特許権で問題になったことが、特に著作権ライセンス契約については、机上の空論ではなく、現実的なリスクであることを裁判例をあげて指摘しています。
この裁判例*3の紹介はありがたいですね。

そして、法改正に向けて『産業界が声をあげることが期待されているように思われる。』と著者の松田弁護士は言っています。
私も、この点の法改正は必要だと思います*4
しかしながら、産業界において知的財産権というと、基本特許権のことを意味することが多く、産業界から声が上がる可能性は低いと思います。
可能性があるとすると、日本知的財産協会の著作権委員会あたりでしょうか?是非、知財協の著作権委員会には頑張ってもらいたいところです*5
それがだめなら、松田弁護士が言われているとおり、「現状を理論的に正しい取扱いとして説明できるのかといった検証に、学会等が法理論的に課題として取り組むべき」ではないでしょうか。

上記に加えて、特許ライセンス契約に当然対抗制度が導入されましたが、それでも残る問題点について言及されています。
具体的には、ライセンス契約の承継の問題として、①ライセンス料(金額)、②ノウハウ提供義務、③独占的ライセンスの保護、④サブライセンスを付与する権利の承継の問題、そして、⑤当然対抗制度の適用がある契約の範囲といった問題です。

このうち、⑤の当然対抗制度の適用がある契約の範囲の問題、私はこの記事で初めて知りました。
どういう問題かというと、ライセンス契約において、ライセンシーに「通常実施権」が許諾されたことが明確であれば、当然対抗制度の適用があることも明確になりますが、英文のライセンス契約など、外国語で規定されたライセンス契約では、日本の特許法上の通常実施権が許諾されたかどうか不明確であり、当然対抗制度の適用があるか不明確である、という問題です。
この問題は、Non-assertion(権利不行使)契約の場合、さらにその不明確さが増すというものです。
この点については、通常実施権の法的性格を権利の不行使特約だという立場からは、Non-assertion(権利不行使)契約の場合であっても当然対抗制度の適用がある、と解釈することになりますが、他方で、通常実施権の許諾契約とNon-assertion(権利不行使)契約が明確に区別されて利用されていることを重視する立場からは、Non-assertion(権利不行使)契約の場合は当然対抗制度の適用がない、と解釈することになります。
どちらの解釈もあるとなると、契約実務上は、Non-assertion(権利不行使)契約えは当然対抗制度が適用されない可能性があることを踏まえて、どのような文言のライセンス契約にすべきか考えないといけない、ということになりますね。


<脚注>
*1 BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2015年06月号
*2 「民法(債権関係)の改正」については、まとまった書籍が発刊されたら、その本を読んで、とりあえずのキャッチアップは終わりになりそうです。。。
*3 知財高裁平成26年3月27日判決。原審は、東京地裁平成25年10月10日判決。
*4 これは、BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2015年06月号の気になる記事の紹介の際に書いたとおりです。
*5 なんてことを、このブログで書いていてもだめですよね。。。