前回は、取引の相手方より、遅延損害金に関する条項について、
「支払期日までに支払いができなった場合に、遅延損害金として遅延した日数に応じて14.6%の遅延損害金の支払いをするというのであれば、支払期日前に支払った場合には、前払いとなった日数に応じて、14.6%の割引(代金の減額)をして欲しい。」
という要望がきたため、これに対して、どのような回答をするか?
というものでした。


これに対して、友人と私とで考えた回答案は、以下のとおりです。

まず最初の回答案は、
①公平という観点からは、本来、貴社の代金支払いと当社の債務の履行が同時履行の関係に立つので、当社の履行期日を基準にして、前払いとして割引を行うか、遅延損害金を発生させるか、を判断するということで良ければ、提案を受け入れます。
というものです。

ロジカルな回答案という意味では、このような回答になるのでしょうか。
但し、取引の相手方の(法務)担当者が、ロジカルな議論で納得される方かどうか分からない*1、というデメリットがありますし、後述⑤・⑥のとおり、このようなルールは、実務上かなり手間で問題点もあるので、取引の相手方に受け入れられても困りますが・・・。


一応、さらに、ロジカルな議論という観点でいくと、
②当社の債務の履行が履行期よりも早い場合は、代金を割増で支払って頂けるのであれば、ご提案を受け入れます。
となるのでしょうか。
なお、このようなロジカルな議論は、もちろん、上手く行く場合もありますが、かえって契約締結までに時間がかかる場合があります*2


契約締結までに時間があまりない場合などは、
③理由は記載せずに、遅延損害金の条項を削除し、先方の回答を待つ。
という対応の方が良いかもしれません。

先方が何も言わずに*3、削除を受け入れてくれた場合は、14.6%という利率は捨てることになりますが、商事利息の6%は確保でき、しかも前払いによる割引という面倒な手続きからも逃れられます*4
但し、本当に、前払いによる割引を先方の担当者が望んでいる場合は、元に戻されてしまう可能性があります。


また、必ずしも、先方の修正案が本当に議論をしたいポイントではない可能性もあるため、議論に正面から回答をせずに、
④特に理由は述べずに、遅延損害金の利率を6%に変更して、回答する。
という方法もあります。

というのも、実は、14.6%という遅延損害金の利率が問題だった可能性もないわけではありません。
もしそうだとすると、先方の修正案に対するロジカルな回答でありませんが、一定の譲歩(遅延損害金の利率を14.6%から6%に引き下げた)を当社がしているため、当社からの修正案を受け入れてもらえる可能性もあります。


また、そもそもの交渉の方向性を変えてしまって、
⑤思い切って、先方の修正案を受け入れてみる。

ちょっと(だいぶ?)リスクがありますが、実務上、本当に、こんなことをしてくるのか?という点を考慮して、「先方案を受け入れます。」と回答をするという考えです。
というのも、支払条件は月末締め翌月末払いですから、当社は月末で絞めて取引の相手方に請求書を発行し、取引の相手方がその請求書に基づいて当社に支払いをすることになりますが、支払期日から逆算して割り引いた代金を計算して当社に支払いを行うという手間を本当に取引の相手方がしてくるのか?という疑問から出発した回答案になります。
ただ、万が一、本当にされるといろいろと困るので、④のように商事利率の6%に引き下げたうえで、このような提案をした方が良い気がしますし、さらに可能であれば、①の「当社の履行期日を基準にして、前払いとして割引を行うか、遅延損害金を発生させるか、を判断する。」という交渉もしておきたいところです。
そう考えていくと、少し条件が多すぎて、⑤はあまりいい回答案ではなさそうですし、万が一、こんなルールになってしまったときのことを考えると、ちょっと恐ろしくて、この回答はできませんね。


最後に、⑤の実務的な手間や問題点を前面に押し出して、
⑥履行期前の代金割引の件は、お互いに事務的な手間が大きく、このようなルールにするメリットはないので、ご提案は受け入れられません。
という回答をすることも考えられます。

前述のとおり、このルールでは、取引の相手方は、支払期日から逆算して割り引いた代金を計算して当社に支払いを行い、当社はこれに対して、請求書に記載されて金額ではなく、実際の支払日が履行期日の何日前であるかと支払われた代金額が割り引いた金額として正しいかどうかを確認する必要があります。そして、万が一、請求書どおりの金額で履行期前に支払いがなされた場合の精算方法の取り決めも必要になります。
というわけで、こんなルールはやめましょう、という方向性の回答案です。

さて、私の友人はどのように回答したのか、というと、ビジネスサイドと協議のうえ、③の方法、すなわち理由は記載せずに遅延損害金の条項を削除する、という方法をとったそうです。
そして、その回答に対して、先方からは、特に修正要望等はなく、一件落着とのことでした。

友人とこの話をしていたときの私の考えはというと、確かに③も良いなと思いましたが、たぶん私の性格的に①と⑥の組み合わせにしそうな気がしました。
つまり、「ロジカルな話としては①という条件になると思うけど、実際に①のルールになると、⑥の手間や問題点が多いので、現状維持でお願いします。」という回答です。
私の選択が良い選択かどうかは、実際に試してみることができないため、わかりませんが*5、でもなんとなく、友人が選択した③よりも、契約締結までに時間がかかりそうで、その意味ではあまり良くない気がしています。。。


<脚注>
*1 契約交渉をお互いの法務部員同士が行うと、とんでもない平行線に陥ったりすることがあります。ビジネス面の決定権が無い、というのも原因の一つですが、相手方の法務部員とのロジカルな議論に負けたとなると、その法務部員の社内での立場で悪くなるので、「最後まで負けを認めない(認められない)。」なんてことが原因のときは、さらに建設的な議論ができなくなったりします。
*2 どちらかというと、時間がかかってしまう場合の方が多いのではないでしょうか。従って、一般論として、契約締結までの時間的余裕がどのくらいあるかが、ロジカルな回答を採用するかどうかの重要な判断要素の一つになると思います。
*3 それが誤解に基づくものであるかどうかは別にして・・・。
*4 この点の詳細は、⑤・⑥で詳しく説明します。
*5 ロジカルな話は一応しつつ、でも解決策は、できるだけ実務面の不都合性を重視して考えましょ、というものです。たぶん、私の性格的には、これを選択しそうです。特に、交渉の相手方がよく見えていない場合は。