定期購読しているBUSINESS LAW JOURNAL(ビジネスロー・ジャーナル)2015年04月号から私が興味を持った記事のメモです。


特集 新しいタイプの商標は活用できるか?は、今のところ、基本的には、活用しないかな?という感じなんですけど、久光製薬 取締役・法務部長の堤信夫さんの言葉には、ちょっと気が付かされることも多く・・・。
この点は、時間が見つけて、また後日にしたいと思います。

さて、先月号に続いて、注目記事のトップは、長島・大野・常松法律事務所の松田弁護士の『ライセンス契約法』です。

今回は、「第2回 ライセンス契約をめぐる法律関係」というタイトルで、まず最初に「ライセンス契約の定義」をして、それ後の「ライセンス契約の本質的要素は何か」と議論が進んが行きますが、設定した視点とその視点に基づてライセンス契約が整理されていて、非常に良い記事だと思います。

まず、「ライセンス契約の定義」については、本来多義的であることを認めつつ*1、取引実務と法的理論の架橋という観点から、ライセンス取引の現場においてライセンス契約が主として期待されている機能に着目して、「ライセンス契約」の定義を考えることとしたい、として、次のような視点を提示します。

ライセンス契約を締結する当事者間には、契約関係に入る前から、既に一定の法律関係が存在しており、この既存の法律関係を前提としながら、新たな取引関係に入る目的でこれを変容させるためにライセンス契約が締結される。このような機能に着目すれば、実務的な観点から、ライセンス契約の本質的な要素を捉えた定義をできる
<略>
ライセンス関係をめぐる法律関係を整理して考える際には、①ライセンス取引の対象である知的財産について規律する知的財産権法に関する法律関係と、②民法(債権法)上の契約自由の原則の下で締結されたライセンス契約に基づき、契約当事者間の債権債務関係を生み出し、これを規律する法律関係(民法(債権法))に基づく部分)とを区別してみるというアプローチが役に立つ*2


この①と②の視点は、ライセンス契約の各条項を検討する際に、とても有益な視点だと思います。
例えば、今回の記事でも分析されていますが、国際的なライセンス契約の場合、同じライセンス契約の条項であっても、①ライセンス取引の対象である知的財産について規律する知的財産権法に関する法律関係については、原則としてライセンス契約で定めた準拠法に関する条項が適用されず*3、②民法(債権法)上の契約自由の原則の下で締結されたライセンス契約に基づき、契約当事者間の債権債務関係を生み出し、これを規律する法律関係(民法(債権法))に基づく部分)についてのみ適用されることになるため、この視点は、実務上とても重要だと思います。
本連載の第1回目の記事でも書きましたが、国際的な取引の際に、準拠法が日本法以外になると、契約書に定めがない場合にその取引に適用される任意法規を少なくし予測可能性を高めるために、できるだけ契約条件を詳細に記載するようにしたりします。
しかしながら、知的財産権に関る条項については、契約書で定めた内容が意味をなさないことがあり、実務上は、かなり気を使います*4
たとえば、職務著作のない国*5とか。。。

『取引実務と法的理論の架橋』という視点と整理が良いのだと思います。次回以降もとても楽しみです。


<脚注>
*1 「ライセンス契約の定義」については、『民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(20)』において、「ライセンス契約は、ライセンサーが、自己の有する特許権、商標権、営業秘密に関する権利その他の知的財産権に係る知的財産をライセンシーが使用することを受忍する義務を負い、他方、ライセンシーが、その知的財産の使用の対価として、ライセンサーに金銭その他の物を給付する義務を負うことを内容とする契約」と定義することが検討されましたが、この定義の場合、無償のライセンス契約が含まれないことになり、産業界から積極的な同意を得られなかったこと、学説上も種々の見解があり得ることを紹介しています。
*2 これを踏まえて著者の松田弁護士は、『ライセンス契約とは、ライセンシーが、知的財産を活用する行為を行うに際し、知的財産権法上の権利を有している者(ライセンサー)から当該権利の行使を受けない権原(不作為請求権を含む)の付与を受けるための諸条件を定める契約である。』と定義します。松田弁護士本人も認めているように、不競法上の権利行使を含めず、不法行為による損害賠償請求なども含まれないため、実務的な用語とは異なりますが、この定義で今後の説明が理論的で整理されたものになる可能性もありますので、この定義に関する評価は、連載が終わってからにしたいと思います。
*3 著作権譲渡契約における著作権譲渡に関する条項は、②の民法(債権法)上の契約自由の原則の下で締結されたライセンス契約に基づき、契約当事者間の債権債務関係を生み出し、これを規律する法律関係(民法(債権法))に基づく部分)に該当する可能性があるため、「原則として」という書き方にしました。
*4 といっても、ライセンス契約を締結している相手方の国の知的財産法を全てフォローできるわけもなく・・・。弁護士事務所等に調査を依頼できれば良いのですが、費用対効果を考えて、最後は、思い切りが肝要なときもあるかと(笑)。
*5 例えば、ドイツとか。随分昔になりますが、そんな案件があって、いろいろ調べたのを覚えています。