Twitter経由で、興味深い話題を見つけたので、それに関連して。

著作権法上、「利用」と「使用」の語は使い分けられているのか?という(ちょっとした)議論がありました。


個人的には、この論点自体、非常に面白いなと思ったのですが、その点についてはTwitter等の議論をご覧頂くとして、ここでは著作物に関するライセンス契約等において、「利用」と「使用」を使い分けるべきか?について、考えを整理してみました。

結論としては、「利用」と「使用」は使分けるべき、ということになります*1
確かに、著作権法において、「利用」と「使用」が使い分けられているか?若しくは、使い分けるべきか?という点について議論がなされており、肯定説と否定説があることも理解しています。
この点に関して、私自身は、(一部苦しいところが無いわけではありませんが)基本的に使い分けられており、使い分けるべき、という肯定説で説明が可能だと思っています*2
ただ、このような肯定説に対して、反論することは可能ですし、また、どこまで効果的は別にして、それに対して再反論することもできます。
ただ、これは、私が否定説の立場にたったとしても同じです。

であるならば、契約交渉にかかるやり取りを減らし、締結後の紛争を避けるために、「利用」と「使用」は使い分けるべきかと。そして、「利用」とは、基本的に、著作権法が定める支分権に基づく行為であり、「使用」とは、基本的に、著作物の効果を享受する行為を指すと考えるべきかと思っています。
というのも、例えば、自社がライセンシーのときに契約書において「使用」という語のみを使って許諾を受け、ライセンサーから「利用」の許諾をしていない、と主張されることは避けたいですし、逆に、自社がライセンサーのときに「使用」は許諾しても「利用」を許諾するつもりが無い場合に、「利用」と「使用」を使い分けられるのは、ビジネス上便利だからです*3

両方許諾する(又は許諾してもらう)場合は、『利用および使用を許諾する。』としておけば足りますし、上記のような典型的な「利用」と「使用」の定義に当てはまらないケースについては、契約書上、許諾をするにせよ、許諾を得るにせよ、明文化しておくことが、のちの紛争リスクを軽減する方法だと思います*4
「利用」と「使用」についての定義条項まで入れることは、日本法を準拠法とする日本語の契約書では今のところしていませんが、アメリカ法を準拠法とする英文の契約書のように(若干?)契約書は長くなりますが、それほど手間な作業ではないので、定義規定をいれても良い気もします。
その方が法務担当や知財担当でない、ビジネスサイドの方でも、具体的に何が許諾されているのか分かりやすくなる気もするので、「利用」と「使用」について定義条項をいれるというのも「あり」かな?と、今回の整理をとおして思いました*5


<脚注>
*1 実際にこれまでも使い分けるべき、という立場から使い分けていました。
*2 この点は、議論としては面白いのですが、実務上(特に契約実務上)肯定説であろうと、否定説であろうと、議論に決着をつける実益がないので、機会があれば、整理したいと思います。
*3 著作権法上禁止されていない「使用」を契約で禁止するのはどうなのか?という問題はありますが、それは、ビジネスのあり方を総合的に検討して、その結果、 著作権法上禁止されていない「使用」を契約で禁止する、というのも「あり」だと思っています。ただし、そのような検討の結果が、正しいものであるかどうかは、疑問の余地がないわけではありませんが・・・。
*4 自社がライセンシーの際のライセンス契約書に、監査条項などが入ったいたときは、許諾内容はできるだけ明確にしたいです。「監査」は、本当にめんどうですし、場合によっては、違約金と監査費用等の支払いがばかになりません。
*5 それなりの数、アメリカ法を準拠法とする英文のライセンス契約を締結している会社で見慣れているなら、「利用」と「使用」について定義条項をいれるというのも「あり」かな?と思いましたが、自分の会社では、まだやめておきます。。。