昨年末に購入して、ようやく一通り読み終えました。
一通り読んだだけではなく、コメントできるくらいには、読み込めたと思うので、感想を。


まず、昨年末発売され、購入予定だった書籍のなかで1・2を争う期待度だったのが本書です*1
理由は、以前こちらでも紹介しましたが、同じ著者が執筆した『著作権法入門』がとても良い本だったからです。



一言でいうと、この『著作権法入門』 『入門』とは銘打ってありますが、実務で十分使えるレベルでした。
もちろん、入門書(=基本書)なので、実務での悩みの答えが書いてある、という意味での良い本ではなく、実務での悩みの答えを導き出すためのヒントに溢れた本、という意味で良い本でした。

このような良さが、今回の『特許法入門』にもあるのでは?という期待が・・・。
そして、『特許法入門』のはしがきには、『法学部・法科大学院での教科書として、そして企業や司法の場で特許実務に携わる際のハンディーなガイドとしても、本書が活用されることを願っています。』とあり、さらに期待が増し、本書を読んだところ・・・。

図や表、写真を使っていて、非常に分かりやすいのですが、『著作権法入門』のときほど、問題の本質を鋭く描きだしてはいなくて、『実務で使えるような本ではないかな?』というのが正直な感想です。
というのも、全442頁中、進歩性に関する説明はわずか3頁弱なので、拒絶理由通知を受け取った際の中間処理時や拒絶査定不服審判等、実務的な対応をする際に参考やヒントになるようなレベルでの記述はありませんし、権利侵害に関する部分は145頁弱とそれなりに大部なのですが、文言侵害に関する部分は7頁と少なく、こちらも実務的な対応をする際に参考やヒントになるようなレベルでの記述はなく、表面的な説明にとどまっています。
全体的に最新の判例や話題に幅広く触れているのですが、その分記述が浅く、『著作権法入門』のときのような問題の本質を鋭く描きだしてはおらず、『なるほどねぇ~』といった感動が薄いです。。。
まだ発売されたばかりというのもありますが、Amazonの書評もまだついていません。
執筆者の方も、「はしがき」で、『旅行のガイドブックがそうであるように、本書だけで学問や実務の最前線を歩けるわけではありません。』とされています。

と、(珍しく)最後は、辛口な評価になってしまいましたが、非常に良い本だと思います。
図や表、写真を使っていて、非常に分かりやすく、それでいて、制度の趣旨・目的、概念の定義がきちんとされているため、入門書としては非常に良くできています。大学生や特許法を初めて勉強する法科大学院生には、とても良い本だと思います*2


<評価> ☆☆☆☆
(大学生や特許法を初めて勉強する法科大学院生向けの本として。本当は、☆5でも良いと思いますが、私の期待ほどではなかったから・・・ではなく(笑)、著作権法入門に☆5をつけてしまったので、それとの比較で。そして、進歩性に関する記述、侵害事件の具体例を増やして欲しいという、第2版への期待をこめて。。。)


<脚注>
*1 もう一つは、法務・知財パーソンのための 契約交渉のセオリー 交渉準備から契約終了後までのナレッジ Theory of Contract Negotiation for Legal Dep (ビジネスセオリー 5)です。
*2 個人的には、高林教授の標準特許法 第5版の方が、私は好きですが、分かりやすさ、とっつきやすさという意味では、特許法入門の方が優れていると思います。