2014年6月18日に開かれた(新)産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の第7回の議事録が2014年7月31日にアップロードされました。
第7回議事録は、こちら
今回の会合で、ある程度具体的な制度案の検討を行うのに必要な「検討の方向」性についてコンセンサスが得られました。


といっても、半ば強制的にコンセンサスが得られた感じでしょうか(まぁ、産業界にとってだけのようですが・・・。)。

今回得られたコンセンサスは以下のとおりです。
○山田制度審議室長 留保条件つきということではございますけれども、以下の点を確認できたのではないかと思います。
まず1点目でございます。研究者の研究開発活動に対するインセンティブの確保と企業の国際競争力、イノベーションの強化をともに実現するべく、職務発明制度の見直しが必要と考えられる。
2点目、オープン・クローズ戦略といった多様な知的財産戦略を使用者等が迅速・的確に実行するためには、一定の場合には、例えば、従業者帰属を使用者帰属とするなどの制度の見直しの合理性が認められる。
3点目、一定の場合に、使用者帰属を認めるとしても、全ての使用者等について一律に従業者帰属を使用者帰属に変更する必要があると認められるほどの事情の変化が平成16年以降に生じていることまでは見出せない。
4点目、使用者等の自主性のみに委ねても、従業者等の発明のインセンティブが確保されるとは言えない場合がある。
5点目、従業者等の発明のインセンティブが実質的に確保されている場合には、現行法のように法定の対価請求権を設ける以外の方法も考えられる。
以上でございます。
○大渕委員長 それでは、以上の点を前提としまして、今後事務局において具体的な制度案の検討を加速し、その結果を当小委員会に戻してさらに審議することといたします。(第7回議事録40頁)

産業界の要望は随分後退した感じがします。
議事録を見ると、産業界の方々が随分と特許を受ける権利の原則使用者帰属となるように頑張っていたのですが、結局のところ大方の賛同を得ることができず、このようなコンセンサスが成立したという感じです。

ここまでくると、先日の日刊工業新聞の以下の記事は、どうなんですかね?

経済産業省・特許庁は29日、特許制度に関する専門委員会を開き、企業内の研究者や技術者による発明(職務発明)について、特許を受ける権利の帰属を発明者本人でなく、発明者が所属する企業にも認めることで一致した。企業が発明者に対する報酬を支払うことを制度的に保証する方向でもまとまった。同庁は7月までに特許法改正の具体案をまとめる。

上記の記事ですと、「特許を受ける権利の帰属を発明者本人でなく、発明者が所属する企業にも認めることで一致した。」と産業界寄りの結論がでた、という感じで一見産業界を支援するような記事の内容に見えますが、実際は、その後に各所でこの記事が取り上げられて、かえって産業界に逆風になったようにも思えます。

それから、前回も同様のコメントをしましたが、この改正の方向性には、ちょっと心配です。
確実に今まで以上に複雑な制度になりますね。
実務者としては、複雑な制度を社内に理解してもらい、使いこなせるか心配になってきました。
使いこなす、という意味では、現行制度ですら使いこなせているか微妙なのに(苦笑)