今日は、お笑い契約文例集の第5弾です。

趣旨は、こちら

あくまでも、
これは決して、とある契約文言を作成した人を、上から目線で笑うためのものではありません。
また、ある一定の価値観に基づき、契約書の善し悪しを判断するためのものでもありません。
大量の契約業務に忙殺されて、リスク、リスクと猜疑心一杯の目で契約書を見ている(もちろん、私のことでは・・・(笑))、とある法務部員のこころを和ませてくれるありがたい契約文言の紹介です。

まず前提として、たまにあることなのですが、会社の方針なのか、それとも法務部の方針なのか(はたまた、法務担当者の思い込みなのか)、片務になっている条文を片っ端から双務に修正してくる方がいます。

たとえば、
「甲は、~できる。」とか、「乙は、~するものとする。」という条項を見つけると、必ず次のように修正してきます。
「甲および乙は、~できる。」
「甲または乙は、~できる。」
「甲および乙は、~するものとする。」
「甲または乙は、~するものとする。」

実は、このような方法は、契約実務の経験が浅い法務部員には、それなりに意味があることであり、その効果について完全に否定はしませんが、今回は、お笑い契約文例集ということで、その効果についてはまたの機会に。

さて、乙が甲に、とあるサービスを提供する予定であり、契約交渉が始まったとお考え下さい。
そして、甲の担当者は、何故か、片務契約がお嫌いで、すべて双務に直してきました。
その中に、以下の条文が含まれていました。

(免責条項)
第○条 甲および乙は、以下の各号のいずれかの事由に該当した場合、本サービスを提供する義務を負わない。
① 天災地変、戦争、暴動、内乱、テロリズム、重大な疫病、その他の不可抗力
② 法令の制定・改廃・公権力による命令・処分
③ 争議行為
④ 輸送機関・通信回線等の事故
⑤ その他の乙の責に帰することができない事由による本契約の全部又は一部の履行遅滞又は履行不能
<略>


後日談1
乙社の担当者としては、上記の修正は無害なので、上記修正を受け入れてそのまま締結してしまっても良かったのですが、以下のように甲の担当者に懇々と説明したそうです。
『私どもの会社(=乙社)がサービス提供の義務を負っております。そのため、不可抗力等一定の場合にサービス提供についての免責条項を設けさせて頂いたのであり、そもそもサービス提供を行わない貴社(=甲社)にはサービス提供義務がありません。従って、本条において貴社(=甲社)を免責する必要がないように思います。もちろん、この場合は当社(=乙社)が免責されては困るとか、サービス提供義務以外の貴社(=甲社)の義務について免責して欲しいことがあるということであれば、別途免責条項を検討させて頂きますので、条項案をご作成願います。』

乙社担当者、優しいな~。なかなかいないよ、こんなに優しい法務担当者は(笑)。だって、交渉が長引く可能性がありますから。

後日談2
乙社担当者の優しさが通じたのか(?)、無事、元の条文に戻ったとのことでした。