2014年4月30日に開かれた(新)産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の第4回の議事録が2014年6月10日に、2014年5月14日に開かれた第5回の議事録が2014年6月13日にアップロードされました。
第4回議事録は、こちら
第5回議事録は、こちら

この第4回と第5回の会議で、ほぼ論点が明らかになり、議論が深まってきた論点もありました。

先日紹介したとおり、この次の第6回の会議で結論が出たみたいですので、結末を知りつつ議論の流れを確認するという感じで読みましたが、その中で少しだけ気になることがありました。
それは、第4回の日本弁理士会のプレゼンと、第5回の日本弁護士会の意見書についてです。
正直に言ってしまうと、これって本当に必要なプレゼンと意見書だったのでしょうか?
ということなんですけど。。。

日本弁理士会も日本弁護士連合会(日弁連)も、どのような目的で、この会議で一定の見解を示したのかが、よく分かりませんでした。
「日本の職務発明制度のあるべき姿を提案する。」という公益目的だったのでしょうか?

たぶん、そうではなく、もしかすると、日本弁理士会と日弁連という職業団体若しくは弁理士や弁護士という職業のアピールだったのかもしれません。
日本弁理士会のプレゼンも日弁連の意見も一般論というか抽象論はそれなりなのですが、質疑応答でのやり取りを見ていると、大事なポイントで具体性がなく、また、議論に深みもありませんでした。

例えば、日本弁理士会は、大学発明、スーパー発明、フリーランス等は別途検討というプレゼンの「別途検討」の意味を問われて、
○高橋委員 まず、別途検討というところは、弁理士会という組織の中で十分な議論ができていませんというのが一番の理由で、こう書かせていただきました。もう一つは、一律に使用者帰属で全部いくのかというと、それはそうでもない部分があるかもしれないので、例外は認める余地があったほうがいいのではないかということで、あえてここは外させていただいた次第です。(第4回議事録6頁)

また、茶園教授からの、「(報奨規程)未整備の場合は、ガイドラインとかADR設置を設置するということですが、その場合、何を基準に判断するかという点について、もしお考えのところがあればお教えください。」という質問に対して
○高橋委員 全く何もないというのは、一方で全く何もないという議論があると思うんですけれども、それではまさしく紛争の解決をどうしたらいいんだというところが進められないと思いましたので、それに対して、ガイドライン程度のものは必要なのではないかというレベルの話なんです。(第4回議事録9頁)
という感じで、ここでも具体的な検討がなされていないようです。

他方で、日弁連も、団体内の意見統一ができていない部分もあり、どのような議論の過程を経て作成された意見なのかな?と疑問に思ってしまいました。

例えば、
○伊原(日弁連) 帰属についてはやはり日弁連の中でも両説ありまして、産業界の御意見も十分理解して法人帰属にするということで、それでいいのではないかという説と、現行法、16 年改正というのを現行法と言っていますけれども、16 年改正法で予見可能性、予測可能性がまだ十分担保されていないという部分については手直しする必要があるものの、現時点ではまだ立法事実がないねという御意見と両説鋭く対立している状況なものですから、帰属について、日弁連としてどちらかの立場にくみする、どちらかの立場を支持するということができない状況ということで、帰属についてはこの審議会で御議論いただくことでお願いしますという、そういう前置きのもとで、ただし、発明者に対しては特許法が、やはり発明したということについては特別の何がしかの報償的なものは付与するというのが我が国の、個別の企業を超えた国全体のこととしてやはりそういうものは必要なのではないかというような共通認識のもとに、報酬請求権、それを法定するか、あるいは報償請求権を規定するような社内規程を設けろというような指示を出すか、そこの仕組みについては明確に結論は出しておりませんが、何がしかやはり発明者というものに対して尊重をするということを明確に法定するべきではないかという意見でとどまってしまったというか、それ以上のことが煮詰められなかった(第5回議事録16~17頁)
とか
○伊原(日弁連) 必ずしも報償支払い請求権というものを具体的に法文上、書き込むのがいいというところまでは言い切っていないのですね。そういう報償請求権を規定する社内規程を設けるという手法も選択肢の中にはあって、それは日弁連としては態度決定していないというのが1点です。必ずしも条文上、報償支払い請求権があるよということを書き込むということは言い切っていないと思っています。(第5回議事録19頁)
と言った感じです。

上記のとおり、いずれも、実際に職務発明に関する仕事をしている、本当の意味での専門家である弁理士さんや弁護士さんが議論をした結果とは思えませんでした。
余計なお世話かもしれませんが、日本弁理士会と日本弁護士会という職業団体若しくは弁理士や弁護士という職業のアピールなら、議事録の読者はもちろん、委員会の出席者もがなるほどね、感心、納得するようなプレゼンや意見を出すべきではないか思いました。
これでは、却って逆効果・・・などと、余計な心配をしつつ(笑)、議事録を読みました。