前回に関連して、今回も知財関連のニュースに関するエントリーです。
2014年5月8日の日経新聞の朝刊に、
「特許出願先、日本は劣勢」
という記事があります。

この2本の記事は、一見すると論理の繋がりがおかしいのでは?と思うようなところもありますが、よくよく考えてみると、確かにそのような面もあるな、という意味で奥の深い記事だと思います。

例えば、「特許出願先、日本は劣勢」の記事には、
 日本での出願件数は05年には42万件と世界で最も多かったが、06年に米国、10年には中国にも抜かれて3位に転落。出願件数は過去5年で16%減っている。
 特許の出願件数はその国の市場としての魅力を映す鏡とされる。出願件数の低迷は日本の人口減少や過度な規制により、海外企業が日本で特許を出願するメリットを感じていないあらわれといえる。国内企業の研究開発費の抑制も響いた。
 日本への出願が減り続ければ、技術革新の遅れ、経済成長の低下、研究開発費の削減という悪循環に陥る懸念もある。
という記載があります。

「特許の出願件数はその国の市場としての魅力を映す鏡とされる。」
これは正しいと思います。
前回のSankeiBizの記事「日本企業が知財戦略を転換し、国内では特許の量より質を重視し始め、海外では生産拠点のグローバル化に伴い現地での知財戦略にも注力しつつあるという変化の表れ」へのコメントのとおり、「生産拠点のグローバル化」による影響よりも、中国を中心とするアジア新興国が、生産拠点ではなく、市場として意識され、認識されてきたことによる影響の方が大きいと思うからです。
ただ、「日本への出願が減り続ければ、技術革新の遅れ、経済成長の低下、研究開発費の削減という悪循環に陥る懸念もある。」の部分の論理が若干分かりにくいと思います。
というのも、「日本への出願が減り続け」ても、日本で研究開発を行い、市場となる海外(例えば、中国、ASEAN諸国など)で出願をすれば、日本の経済成長が低下し、研究開発費の削減という悪循環に陥ることもないと思ったからです。
また、「日本の経済成長の低下」については、原因と結果が逆だと思います。日本市場に魅力がある、つまり、経済成長しているからこそ、日本市場に魅力がでるのであって、その結果、日本への出願が増加するという流れだと思います。日本への出願件数が増加したからといって、日本市場の魅力が増し、日本の経済成長が大きくなるわけではないと思います。そして、「研究開発費の削減」については、市場となる海外で知財権を取得するために研究開発を行えば、それも日本で行えば、研究開発費の削減という悪循環に陥ることもないと思います。
(日本で出願件数が増えれば、日本の特許庁の収入が増え、それに伴い特許庁職員を増加させ、日本の雇用拡大に貢献するという小さな経済効果はありますが・・・。さらに審査期間を短くするとなると、特許庁職員の増加は不可欠になるかと。)。

しかしながら、次のような一面があるのもまた事実かと。。。
海外で出願するとなると、出願書類は日本語以外の言語で作成されます。そうなると、これまではIPDLから日本語取得できていた特許が、海外のDBにアクセスして、日本語以外の言語の文献を読まなけばならなくなります。
つまり、読める人が減り、他社の発明を知る機会が減り、技術の豊富化が起こらず、技術革新が遅れ、経済成長が低下し、利益が少なくなるので、研究開発費も削減されという悪循環に陥る可能性はあるのかな?と。
そういう意味だったのでしょうか?
そうだとすると、実務に配慮した興味深い記事だったと思いますが、真相はいかに?(笑)