2014年5月1日の日経新聞の朝刊の記事に、『中国、来春にも知財裁判所 FTA交渉の進展狙う』というものがありました。
この記事は、次のような書き出しで始まります。

中国政府は知的財産に関する事件を専門的に扱う知的財産法院(裁判所)を、早ければ2015年春に新設する方針を固めた。まず外国企業が集積する上海と広州につくり、その後全国に広げる。米当局が30日公表の報告書で中国を「優先監視国」に指定するなど知財保護の甘さへの国際的批判が根強いのに対応する。司法制度改革をアピールし、外国企業の進出や自由貿易協定(FTA)の締結に弾みをつける狙い。今後は実効性が焦点になりそうだ。

そして、記事全体の論調も、「中国の知財保護の甘さへの国際的批判が根強いのに対応する。司法制度改革をアピールし、外国企業の進出や自由貿易協定(FTA)の締結に弾みをつける狙い。」として、中国は国家をあげて知財の保護に取り組むという対外的なアピールである、というものになっています。

しかしながら、この記事のなかでも述べられていますが、この記事の核心は以下の部分にあるのではないでしょうか?
技術力が上がり、中国企業が知的財産権の被害者に回るケースが増えているのも制度改革を後押しする要因だ。世界知的所有権機関(WIPO)によると、13年の特許の国際出願件数で中国はドイツを抜き、米国、日本に次ぐ世界3位に入った。他の新興国企業との関係では「今では中国の方が知財保護を求める立場に変わりつつある」(汪副首相)

世界的な水準で見ると、中国は、技術のキャッチアップ国から先端技術の開発国への移行段階に入りつつあるということですね。
今後も中国が経済成長を続けるためには、世界における自国のポジションの変化にあわせた、社会・産業構造の転換をスムーズに行う必要があります。これは、米国、ドイツ、日本等が既に経験してきたことでもあります(日本がスムーズに社会・産業構造の転換ができたかどうかは別にして。。。)。

習近平国家主席は、中期的な経済改革の道筋を決めた昨年11月の共産党中央委員会第3回全体会議(3中全会)で「知財の運用と保護を強化し、新たな技術開発を促す仕組み結びつけたい」と述べ、知財保護強化に取り組む姿勢を強調していた。」
中国政府は、国家戦略として知財を保護することの重要性を十分認識しているものと思われます。

さて、こうなると中国を市場と捉えている日本企業も意識改革を行っていく必要があると思います。
これまでは、日本企業が中国企業の知的財産権侵害に対して、警告状を送付し、レイドをかけたり、訴訟を提起することはあっても、中国企業から知的財産権侵害の警告状を受け取ったり、レイドをかけられたり、訴訟を提起されるということは滅多にないことなのではないでしょうか。
私の経験でも、中国では、警告状にしても、レイドにしても、訴訟にしてもすべて知的財産権を行使する側でした。

記事にも、
中国国内の訴訟でも現状では、外国企業への訴訟よりも国内企業同士の争いが多いとされる。
とあります。

ただ、これからは、中国市場で展開している日本企業が中国企業から知的財産権侵害で訴えられるケースが増えてくるのではないでしょうか。
それも特許権侵害と著作権侵害の訴訟が増えるものと思います。
特許権侵害については、一部の日本の大手企業を除いて、中国市場で展開している日本企業のほとんどが特許調査も特許出願もしていないと思うことが理由です。
そして、著作権侵害については、判例が積み重なって、著作物性(=創作性)、アイディアと表現の2分論、類似性といったことに関する判断基準がある程度固まるまで、判決への予測可能性が低く、その曖昧さゆえに法的な主張として利用されやすいと思うことが理由です。

でも、(自分で言っておきながら、なんですが)本当に、判決への予測可能性が低い、かどうかは微妙ですね。特に、日本企業にとっては。。。
もっとも、中国では司法も共産党の「指導」の下におかれており、独立性に欠く。知財専門の裁判所を設けても、、政治力を持つ国有企業など中国側に優位な判決が出るなど恣意的に運用される可能性も否定できない。
ある意味わかりやすいかも(苦笑)

正直なところ、私は、中国の国有企業と訴訟をしたことがないので日経新聞の記事を判断する資料を今のところ持ち合わせていませんが、国有企業でない中国企業との訴訟はいくつか経験しており、そのいずれも良い結果がでていますので、それほど中国企業優位ということはないように思います。
あくまで国有企業ではない中国企業との訴訟についてですが。。。

いずれにしても、中国において、知的財産権侵害の被告となることないように、そして、被告となっても十分に戦えるように、私自身そろそろ真剣に準備をしておく時期が来たかなと思いました。