先日、BUSINESS LAW JOURNAL(ビジネスロー・ジャーナル)2014年 2月号の「特集 法務のためのブックガイド2014」に示唆を受けて、「特集 法務・知財のための特許法関連ブックガイド2014」をしたのですが、なかなか好評でしたので、今日はその第2弾。
「特集 法務・知財のための著作権法関連ブックガイド2014」
をしてみたいと思います。


前回同様、新年度も間近ということで、4月から法務部ないし知財部に配属される新入社員および新人向けの基本書から。

【法務部員&知財部員向け著作権法関連基本書】
通常であれば、知財の専門部署である知財部と、スペシャリストではありますが、それでも知財部に比べると、法律分門のゼネラリストである法務部とでは、要求される専門性が異なります。
ですから、先日の「特集 法務・知財のための特許法関連ブックガイド2014」では、法務部員向けと知財部員向けに分けて紹介しました。
ただ、著作権法は、企業によっては、知的財産部でなく法務部で扱うこともあると思いますし、(基本的に)出願手続きがありませんので、他の知的財産権、とりわけ産業財産権とはいろいろと異なる点があり、あえて法務部と知財部向けに分ける必要がないのが著作権法かと思います。
そして、幸いなことに法務部員と知財部員の両方に、迷うことなくダントツでお勧めできる書籍が著作権法にはあります。それは、『著作権法入門』です。



著者は、島並良(神戸大学教授)、上野達弘(早稲田大学教授)、横山久芳(学習院大学教授)のお三方で、皆さんお若いのです。2009年発行の書籍ですので、執筆当時は皆さん30代です。
この若さが、本当に良い方にでた革新的な1冊です。
入門と銘打ってあるとおり平易な記述で非常に読みやすい本に仕上がっていますが、その一方で入門とは思えないほど、実社会で問題となった具体例を多数あげており、本当に実務で使える内容になっています。
実務で著作権法を使いこなすためには、著作物となるための重要な要件である創作性の判断と著作権侵害の重要な成立要件である類似性の判断がある程度の精度をもってできるようにならなければなりません。
ところが、これまでの著作権法の教科書は、初学者にもわかる内容で、いや初学者どころか、ある程度企業実務を経験した人にとっても、創作性があるかどうかの具体的な判断基準と類似かどうかの具体的な判断基準を示すことには、成功していなかったと思います。

ところが、本書は、図、表、イラスト、写真等を駆使し、具体例を多数あげて、表現されたものを保護するという著作権法の本質を直感的に理解させてくれますし、そして、その直感的な判断を支える合理性を、適切な言葉で理論付けし、判断基準を示してくれるため、著作権法の初学者を一気に実務において著作権法が使えるレベルに引き上げてくれます。

例えば、著作権侵害訴訟を経験し、著作物の類似性について証拠を集めて立証した人であれば、気が付いたと思われる「創作性と著作権の保護範囲」の関係について、本書では、以下のとおり、極めてストレートに説明しています。

(4)創作性と著作権の保護範囲
著作物性の判断は、著作権侵害の判断と表裏一体の関係にある。
<略>
このように創作性の判断と侵害判断とが表裏一体の関係にあるということは、表現物の創作性の高低が著作権の保護範囲の広狭に連動するということを示唆するものである。
<略>
以上のよう、表現物の創作性が高ければ、著作権の保護範囲も広がり、表現物の創作性が低ければ、著作権の保護範囲も狭まることになる。この点で、創作性の要件の検討は、著作物のみならず、著作権の保護範囲を認定する際にも重要な意義を有するものといえる。(著作権法入門 31~32頁)【1】

【1】本章は横山久芳教授の執筆なのですが、これ以来、横山教授は、私の中で注目度No.1の若手知財(著作権法)学者になりました。

著作物AとA’は非常によく似ているのに裁判では非類似と判断されて著作権侵害が成立しなかったのに、それと同じくらい似ているように見える著作物BとB’の事件は類似と判断されて著作権侵害が成立すると、「やっぱり著作権法は難しい、よく分からない。」とか、「裁判官は恣意的だ。」とか(苦笑)、そういう論評をよく聞きますが、「表現物の創作性の高低が著作権の保護範囲の広狭に連動する。」ということを知って、このような問題を見ると、そして、実際にどのような立証がなされたかを見ると、「なるほどね。」と納得することが多くなると思います。
この作業こそが、著作権侵害の成否をある程度の精度をもってできるようになるために必要なことだと思います。

これができるようになれば、ビジネスサイドから「これって、似てます?著作権侵害ですかね??」と聞かれたときに、「(業界慣行等踏まえて)似ていると思うなら、似ていると思う個所を変えて下さい。」といったトートロジー的な回答をすることなく、ある程度高い精度で著作権侵害の成否を判断し、回答できるようになると思います。

というわけで、本書は、本当にお勧めです。


続いて、本格的に著作権法を実務で使う人にお勧めなのは、以前こちらで紹介した田村善之教授の『著作権法概説』
です。



BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2014年 2月号の「特集 法務のためのブックガイド2014」のAさんのコメントにもあったとおり、学者の概説書で実務に生かせるのは北海道大学田村善之教授の「著作権法概説」だと私も思っています。
田村教授は、「GREE v DeNA 釣りゲーム訴訟」のときに、GREE側の代理人の依頼を受けて、鑑定意見書を出しており、最新の実務への関心が高く、また、企業法務知財の最前線で実際に何が起こっているのかも、認識されているように思います。
ただ、残念ながら、上記リンクのとおり2001年に第2版が出てから改訂がされていません。
今年改訂版が出るという話がありますので、改訂第3版がでたら私も必ず購入したいと思っている1冊です。

なお、こちらで紹介したように、ここ数年の田村教授の研究の成果が論文『日本著作権法のリフォーム論 - デジタル化時代・インターネット時代の「構造的課題」の克服に向けて ー 』として公表されていますので、改訂第3版がでるまでは、こちらで田村教授の問題意識や関心、最新の解釈論から立法論まで補充することができると思います。