昨日(2014年2月22日)の日経新聞の朝刊によると、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉において『日米を含む複数国は映画や音楽などの著作権を守る期間を権利者の死後70年に延ばす案を支持。』とのこと。


さらに、
『海外での著作権収入を増やしたい米国が各国に期間延長を働きかけている。アニメやゲームの輸出に力を入れる日本は米国と共同歩調をとる。カナダなども国際標準の70年を容認する見通し。アジアの一部は一律の延長に慎重で、分野によって違う年数を設けられる例外規定もつくる方向だ。
 企業は著作権の保護期間が延びれば海外で外貨を獲得する機会が増える。消費者は自由に作品を楽しめる日が遠のき、古い作品が安く手に入らなくなる可能性もある。日本の交渉筋は「国際標準に日本も合わせる必要がある」と説明する。』
と続きます。

著作権の存続期間を著作者の死後50年から70年に延長することに、ネット上では否定的な見解が多いようですね。
確かに、保護期間延長論者の主張は、その根拠が薄弱で論理的にはあまり良くはないと思います。

ただ、私自身は、理想論ではありますが、条件付きで著作権の存続期間を著作者の死後50年から70年に延長した方が良いと思っています。

というのも、知財立国の名の下に、コンテンツを世界に輸出するという目標を本気で掲げるなら、著作権の存続期間を70年に延長してハリウッドと正面から戦うべきではないでしょうか。
本当に稼げるコンテンツなら著作権の存続期間を70年にして、著作権によるコンテンツのコントロールを通じて世界へ広めれば良いと思います。著作権があるということの本当の強みは、対価を得られるということではなく、コンテンツをコントロールすることができることにあるのですから。

反対派の意見の中には、「日本において保護期間が延長されれば得する欧米の作品はたくさんあるが、日本の古い作品で延長しないと困るものがどれだけあるのか。ゲームや漫画、アニメなどは輸出が多いが、それは20年後の国民が考えればいい。」という意見があるようですが、こんなご都合主義の主張を国際舞台でするのは、某お隣の国だけで十分(笑)で、日本までこういう主張をする必要はないし、すべきではないと思います。
というのも、今回のTPPで決まったことが、10年や20年後に変えられる保証はどこにもありませんし、そもそもこういう主張の仕方をして世界を変えることできるのは、現在は、米中だけだと思います。
国益中心にものを考えて、国際舞台で発言するのではなく、あるべき社会の姿を考えて、国際舞台で発言をしていかないと日本は賛同者を得られないと思います。
100歩譲って、目的が国益にあったとしても、いやむしろ国益にあるときこそ、上記のようなことは絶対言ってはいけないと思います。今回のような交渉で、真意を明かすことが有利に働くように思えませんし、国益にかなわない、という発言で今回のような交渉に勝つのは非常に難しいと思います。

ただし、70年に延長する以上、次の条件を必ず満たす必要があるとも思っています。
①新しい著作権登録制度を導入すること。
②フェアユース規定を導入すること。

①の新しい著作権登録制度とは、例えば、次のようなものです。
まず、著作者が個人の場合、著作物の公表から5年以内(制度導入時は制度導入から5年以内)に著作権登録をすると公表6年目以後も、生存期間中は、著作財産権を行使することができ、当該著作物の著作権が侵害されたときは損害賠償について3倍賠償ないし懲罰的賠償を認めます。
そして、著作者死亡時、死亡後25年、死亡後50年に登録の更新が必要なものとし、著作権の更新登録をしていないと著作財産権の行使はできないこととします。
また、著作権登録がある場合は、侵害者に当該著作物への依拠があったものと推定します。
初回の著作権登録料は1万円程度とし、1回目(著作者死亡時)の更新料は30万円、2回目(死亡後25年)の更新料は50万円、3回目(死亡後50年)の更新料は100万円とします。
なお、これらの費用は、著作権が譲渡された場合は、その譲受人が更新手続きを行い、更新料を納付する義務を負います。
法人の場合、上記とは異なる更新料の制度を設ければ良いと思います。
例えば、著作権登録は、登録を受けたい著作物全部を一定の方式に基づいてデジタル化し、その容量(バイト数)に応じて登録料と更新料を決めまるようにし、個人よりも高額の登録料と更新料になるように設定します。
また、法人が著作権者の著作物については、非親告罪化することを検討しても良いと思います。
(基本的には、私は非親告罪化には反対なので、これは慎重に検討する必要がありますが・・・。)

上記のような著作権登録制度を導入すれば、おそらく孤児著作物の問題は解決すると思いますが、それでも問題となる孤児著作物があるのであれば、別途孤児著作物対策を講じます。
そして、やはり、②フェアユース規定については、その導入に向けて再度議論を行い、個別の権利制限規定の解釈でも著作権侵害となってしまうような公正利用を著作権侵害としないための一般的な権利制限規定を導入した方が良いと思います。

なお、①のように著作権登録制度を導入すべきであるという意見は、決して独自のものではありません。
制度の詳細にまでは触れられていませんが、例えば、野口祐子弁護士の「デジタル時代の著作権」においても同様のことが述べられています。



ところが現在の議論は、権利者と利用者(若しくは、自称公平な第三者や公平な第三者を装う知識人)がお互いに自分たちの立場から自分達の利益を主張するばかりで、相手方の主張に根拠があるとかないとか、論理的であるとかないとか、権利者と利用者(若しくは、自称公平な第三者や公平な第三者を装う知識人)が対立する構図を煽るだけになっている気がします。
識者と呼ばれる方々も、その大部分が、50年か70年か、親告罪か非親告罪か、と2項対立的な議論を行ってばかりで、この対立の構造から抜け出すこと拒んでいるようかのように感じます。
お互い何がそんなに気に入らないのでしょうね(笑)。
感情的な対立になってしまっている気がします。

それより、著作権の保護期間を延長したいという著作権者の要望と、インターネット上の違法ダウンロード等に悩まされ、収益を拡大したいと思う著作権者の要望を3倍賠償や懲罰的賠償という形でかなえつつ、新しい著作権登録制度を設けて強力な権利が付与される著作物を厳選し、あわせて孤児著作物の問題を解決することで、利用者の利用範囲が拡大し、より多くの人々が技術の発展の恩恵と自由を享受できる社会を構築していった方が、よほど建設的かと思います。