契約書に、営業譲渡や事業譲渡が行われたことを解除事由としている契約文言があると思います。


今回のエントリーの発端は、私が所属する会社の契約書において解除事由の一つとして「営業譲渡」という言葉を使用しているところがあり、取引先の法務担当者から、この「営業譲渡」を削除するようにと要望があったことから始まりました。

理由は、「会社法の制定以前は、商法の中に営業譲渡という言葉はあったが、会社法の制定により、事業譲渡という文言になったから。」ということでした。
当社において、ほぼひな形と同様の取り扱いをしている契約書の文言への指摘だったため、ざわつく周囲から、
「あっ、本当だ。会社法では事業譲渡になっている・・・。決裁取り直して変えないとダメかも。。。」なんて声も聞こえてきました。

雛形の功罪の、罪のひとつですね。
(このお話は、今日はさておき。)


まず、「営業譲渡」という言葉がなくなってしまったかどうかという話から先にすると、商法の16条および17条では、以下のとおり『「営業譲渡」人』なる言葉があり、また『営業を譲渡』『営業を譲り受け』という言葉があります。

『(営業譲渡人の競業の禁止)
第十六条  営業を譲渡した商人(以下この章において「譲渡人」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市にあっては、区。以下同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その営業を譲渡した日から二十年間は、同一の営業を行ってはならない。
2  譲渡人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その営業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。
3  前二項の規定にかかわらず、譲渡人は、不正の競争の目的をもって同一の営業を行ってはならない。

(譲渡人の商号を使用した譲受人の責任等)
第十七条  営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。
2  前項の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人及び譲渡人から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。
3  譲受人が第一項の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、営業を譲渡した日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。
4  第一項に規定する場合において、譲渡人の営業によって生じた債権について、その譲受人にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有する。』

というわけで、「営業譲渡」という言葉が法律上全く使用されない状況になっているわけではありません。

これに対する反論としては、「確かに、条文上、営業譲渡という言葉はあるが、これは商人間の話であり、会社同士の契約書に営業譲渡を使うのはおかしい。」という反論がありえ、実際にそういう話の流れになりました。

ただ、これに関して会社法24条は、以下のとおり規定しています。

『(商人との間での事業の譲渡又は譲受け)
第二十四条  会社が商人に対してその事業を譲渡した場合には、当該会社を商法第十六条第一項 に規定する譲渡人とみなして、同法第十七条 及び第十八条 の規定を適用する。
2  会社が商人の営業を譲り受けた場合には、当該商人を譲渡会社とみなして、前二条の規定を適用する。』

つまり、会社が商人に対して事業を譲渡する場合は、商法16条1項の譲渡人として営業譲渡とし、商人が会社に対して営業を譲渡する場合は、商人を譲渡会社として事業譲渡とするということです。
したがって、今回の契約書は、会社間で取り交わされるものですが、それぞれの契約当事者が、契約当事者以外の第三者に営業ないし事業を譲渡する場合、その第三者が商人であれば営業譲渡、会社であれば事業譲渡なるわけです。

というわけで、結論としては、営業譲渡を削除する必要はないということになります。
雛形作成に携わらず、安易に、雛形だからといって使用していると、法務部員のスキルはアップしづらいけれども、かと言って、いつも一から作成していては、スピードにかけるので、悩ましいところです。
法務部内で、雛形に関する講習会でもしようかな。