ブログのアクセス解析をみると、ロースクール卒業生関係の記事へのアクセスが結構多いみたいなので(興味を持ってお読み頂いている皆さま、ありがとうございます。)、今日は、ロースクール生で企業法務に就職することを考えている皆さんへ、書籍の紹介です。
(なお、本書は、それなりに真面目に法律の勉強をしている法学部生で、企業法務への就職を考えている人にもお薦めです。)


今日ご紹介するのは、TMI総合法律事務所のパートナーである淵邊善彦弁護士の「ビジネス法律力トレーニング」です。

ビジネス上話題になったり問題になったことを事例にして、クイズ形式(全48問)で紹介しています。
ロースクール生なら(法学部生でも真面目に法律を勉強していれ)ば、内容自体はそれほど難しくなく、むしろ、易しく読みやすい内容になっていると思います。
ただ、ビジネスの基本である商取引から、人事・労務、コンプライアンス、会社法、知財、海外取引と、企業法務の主要テーマを取り上げているため、知らない話題もあり、クイズには答えられないもののあると思います。
しかも、ここ数年話題になっている事例や、ほんの数ヶ月前に話題になった最新の事例などが取り上げられており、企業法務最前線でどんなことが問題になっているかを幅広く知ることができると思います(これだけでも、社会人経験のないロースクール生や法学部生には役に立つのではないでしょうか)。

例えば、
[問題01]
熊本県のゆるキャラ「くまモン」は大ブレークしましたが、その理由のひとつは法律関係の処理が他のゆるキャラとは違ったことにあります。何が違ったのでしょうか。

[問題02]
「クレヨンしんちゃん」の商標は、中国企業によって中国で勝手に登録されていました。
商標は先に出願した者に権利が発生します。しんちゃんの権利者である日本の企業はどのように争うことによって中国で勝訴したのでしょうか?

とこんな感じです。

問題設定の方法からして、その解説は、ロースクールで勉強するような法理論が飛び交うようなものではなく、かなりビジネスを意識した内容になっています。
例えば、[問題01]の解説のなかでは、朝の連続ドラマ「あまちゃん」の映画「潮騒のメモリー」の話がでてきたり、2020年東京五輪の商標問題について触れられています。
なぜ、これらに触れられているのかを知りたい方は、是非、本書をお読み下さい(笑)。そして、その広がりに興味を持って頂ければと思います。
また、[問題02]の解説のなかでは、商標権の問題なのに、最終的に著作権法で解決したことが紹介されています。

もちろん、これらの点については、軽く触れられている程度なので、本当に実務で対応するためには、別途学ぶ必要はあります。
あくまで、この本は、深い法的な知識を得ようとか、実務で必要となる法理論を学ぼうとするためのものではなく、広く浅く、ビジネスをメインに法律がどのように使われているのか学び、ビジネスの一旦を垣間みるための本です。
いわばビジネス法の入門書といったところですね。
また、法理論を全面に押し出すことなく、本書の解説にあるような必要最低限の法的な知識だけで、あとは分かりやすく説明する技術、興味を湧かせる問題設定の仕方、話の仕方というのは、企業の法務知財部員にとって必要となる能力でもあります(この点の詳細は、また後日機会があれば説明したいと思います)。

そういう意味で、企業法務に関心のあるロースクール卒業生や法学部生が読むにとても良い本だと思います。
(この点の必要性については、こちらで少し説明しています。「2 面接時について」あたりが該当箇所になります。)

なお、この本では、特定の問題を深く学びたい人のために、各所で参考となる書籍があげられていますので、興味を持たれた書籍をご覧頂ければと思います。その際は、是非、皆さん自己責任でお願いします(笑)。

<評価> ☆☆☆☆☆ (企業法務に関心のあるロースクール生及び一部法学部生)
     ☆☆☆   (入社1〜2年目の法務知財部員。)