今回は、ロースクール卒業生の就職活動への助言の3回目です。
この話題、皆さん興味があるようで、アクセス数が多いですね。
それだけ皆さん、お困りというか、情報が不足しているということなのでしょうか。


今回は、ロースクール卒業生の就活への助言の3回目、最終回として、法律知識についてお話をしたいと思います。
ここでいう法律知識とは、判例や通説に関する知識と考えてもらえれば良いと思います。

結論からいうと、法律知識は、無いよりもあった方が良いですが、やはり企業サイドとしては、法律知識(判例や通説等)をどのように使うのかを採用の際に重視していると思います。
このことは、コミュニケーション能力が高いかどうかを見ていると言い換えても良いと思います。コミュケーション能力の高さをはかるのに、あなたの法律知識の量が多いこと前提に話をする必要は企業サイドにはありません。
むしろ、法律知識の量が多いと見せるために、中途半端な知識を前提にコミュニケーションをするより、知らないものは知らない、ということを前提にして(採用面接官に伝えた上で)、面接の時点で持っている正確な知識と情報に基づいて回答をするという、コミュニケーションができるかどうかが重視されていると思った方が良いと思います。
というのも、企業における採用面接は、あなたが、法曹になるに相応しい法的知識や能力を備えているかを判断する場ではありません。採用した会社の社員として、もしくは、法務部員、知財部員として、これからの長く社会人をやっていけるかどうか、採用した会社で活躍できる可能性を秘めているか、を判断する場だからです。
そして、そもそも面接官自体、あなたよりも正確な法律知識を有しているかどうかはわかりません。もちろん、法曹として十分通用するような高いレベルの法律知識を持っている面接官もいますが、きちんとロースクールで法律を学んできたあなたよりも法的知識を持ち合わせていない面接官にあたることの方が多いかもしれません。
特に、一次面接の場合や、人事担当の面接の場合は。。。
そんなときは法的知識の量の有無ではなく、あなたの説明が分かりやすいか、専門用語を使わずに、法的な知識や素養の無い人が聞いても理解できるような説明ができるか、面接官が疑問に思ったことを素直に理解して、その疑問に分かりやすく答えられるか、そして何よりも知らないことをあたかも知っているかのように回答し、面接官からの質問(突っ込み?)に対してあやふやな回答をしたり論理矛盾を起こすような回答をしていないかなど、いわゆるコミュニケーション能力が高いかどうかが問われていると思って下さい。

そして、運良く(?悪く(笑))、法曹として十分通用するような高いレベルの法律知識を持っている面接官に当たった場合は、判例の言い回しや、基本書に書いてある記述を使って説明することで、きちんと勉強をしているなと評価されると思いますが、おそらく、それ以上でもそれ以下の評価ではなく、採用の決め手にはならないと思います。
理由は、前回少し説明しましたが、他の応募者も違う何か、例えば語学力(英語)、を持っているのが通常であり、法的知識の量それだけでは差別化要因にならないと思った方が良いと思います。
逆に、法曹として十分通用するような高いレベルの法律知識を持っている面接官に当たった場合は、非常に厳しい目で、応募者の法律知識や法的思考力が試されることになり、かえって苦戦するかもしれません。

面接官の法律知識や法的素養がどの程度あるのかは、面接官の自己紹介があれば、所属はどこと答えていたのか、法務なのか人事なのかや、面接官の反応、つまり、面接官自体が法的な専門用語を使っているか、またはロースクール時代にロースクールの教授や友人達と法律の議論をしていたときのような質問や回答が返ってくるか等で確認をして下さい。
そして、面接官の疑問・質問に分かりやすく答えることを意識して下さい。
間違っても、「判例の考え方・言い回しは、これで正しかったはず。」とか、「通説(ないし有力説)の考え方はこうだったはず。」という法律知識の正しさを前提に、同じ説明を繰り返さないようにして下さい。

さらに、私個人が最も大事だと思うことは、
①説明の際に、論理矛盾を起こさないこと、下手に取り繕わないこと、
②面接官との会話のなかで、今までになかった発想や着想があり、結論を変えざるを得ないと思ったら、素直に、その発想や着想を取り入れ、論理矛盾を起こさない前提条件にまで遡って、論理の流れと結論を変えること、
③その際に、面接官に、どのような発想、着想を取り入れ、どこから論理の流れを変え、結論も変えたのか、きちんと説明をすること。
だと思います。

このようなことを通して、企業サイドは、採用のポイントである、
2 コミュケーション能力が高いか?
4 論理推論能力があるか?
5 柔軟性があるか?
6 勉強熱心か?
を見ていると思います。

最後に、職種別採用ないし部門別採用の特殊性について説明したいと思います。
職種別採用ないし部門別採用の場合は、通常は、配属される法務部門の方が面接をすると思います。
その際に、
7 社風(当社法務)にあうか?
という点を見ることが良くあると思います。
より具体的に言うと、当社法務部門で、一緒に仕事をすることがイメージできる人物かどうか?
法務部門の諸先輩方と上手くやって行けるか?パーソナリティとして、法務部門に調和する、ないしは必要とされる人か?といったことです。

そして、これは、就活生においても、そして、面接官においても非常に難しい問題です。
就活生においては、正直、事前に準備することなどできず、面接官においては、極めて主観的な判断になるため、その判断の正しさを検証することが難しく(かつ、数年後、もしかすると数十年後にしか、その判断の正しさを検証できない。。。)、法務部門としては、このような能力の高い人を見つけ、その人を面接官にすることができるかどうかという問題だからです。
このように非常に難しい問題にも関わらず、この点が、意外と重視されているのです。

就活生にとっては、残念ながら、運というか、縁というかしかありません。

しかしながら、このことは裏を返すと、就職面接で何度落ちようと、能力や人格・性格の善し悪しとは全く関係がないところで合否が決まることがあるということです。
むしろ、その方が多いかもしれません。。。
ですから、是非、自信を失わずに、あきらめずに、チャレンジして欲しいと思います。
(運のなさ、不運なことを嘆いても詮無いことですから。)

頑張れ!ロースクール卒業生!!