2006年に発売された本書ですが、ここ数年機関法務を担当することが多くなったこともあり、再読してみました。
入門と銘打ってありますが、読みやすく分かりやすいという意味での入門書ではありません。
ただ、企業法務において機関法務を担当する方に新会社法を考える際の骨太な指針が示されており、その意味では、入門書といっても良いのだと思います。
そして、本書を読み直して、学会を代表する学者の著書は次元が違うな、とあらためて感心させられました。


具体的には、以下のような神田教授の問題意識と実務的な視点です。
「はじめに」には、
『法は、社会・経済の重要な制度的インフラストラクチャーのひとつである。とくに経済活動に関わる分野の法は、国の経済発展をサポートすべき存在であって、それを妨げるようなことがあってはならない。』
『法制面では、日本企業が今後収益を上げていくことをサポートするような企業法制と株式市場法制の思い切った改革が必要である。』

その上で第1章で、
『ファイナンス分野』『ガバナンス分野』『会計法制』『ベンチャー企業育成』といった各分野での会社法の考え方を説明していきます。
特に、『ガバナンス分野』では、『消極的なコンプライアンスの議論と、競争力強化のためにどいうガバナンス法制がよいのかという積極的な議論との双方がある。』とか『不祥事防止その他の「コンプライアンス」(法令遵守)重視という消極的な議論が一つ。同時に企業が繁栄するためにはどういう仕組みがよいのかという積極的な議論の二つがある。』とか。
そして、
『1990年代後半から、「コーポレート・ガバナンスのあり方が実は企業のパフォーマンスに影響を与える。したがって、国の経済にも影響を与える」という議論が世界的に勢力を持つようになった。』
と続いていきます。

現在でも、コンプライアンス=法令順守という認識がまだまだ残るなか、2006年に発売された本書では、ガバナンス=法令順守という意味だけでなく、会社業績に結びつくという積極的な意義をコンプライアンスに持たせた説明をしており、この視点に基づいて説明がなされるている本書は、この点だけでも再読の価値がありました。
そうそう、随分昔の話ですが、「株主(総会)は国民で、取締役会は国会で、代表取締役は内閣で、監査役は裁判所」なんて会社の機関を憲法の統治機構になぞらえて説明していた商法学者もいましたが、時代が変われば、変わるものですね。

ところで、話は変わりますが、このような説明を商法(会社法)学者がしていると企業の(法務部員以外の)方々が聞けば、拍手喝采をとおり越して拍子抜けしてしまうのでしょうか。
それとも、法律とはそうあるべき!それに引き換え、うちの法務部は、リスクリスクと馬鹿の一つ覚えで・・・・・(笑)。
なんて言われてしまうのでしょうか?(大笑)