ここ数年、チャイナ・プラス・ワンということで、中国以外のASEAN諸国の法制度を調べていました。
調査した結論はというと、


一言でいうと、タイトルにあるとおり、『日本の常識は、ASEANの非常識?』です(苦笑)。

たとえば、ASEAN加盟国トップの人口を誇るインドネシア。日本からの投資も近年増加傾向です。
さて、このインドネシアで勝訴率1・2を争うという弁護士に、裁判で勝つ秘訣を尋ねると、


「相手方より1ルピアでも多く裁判官にお金を渡さすことさ♪」とさらりと言ってのけたとか(笑)。


インドネシアでは、外国判決の執行力は認められていないそうです。その根拠は、インドネシアの法律に明記されているわけではありませんが、ガイドラインとして利用されているオランダ民事手続法第436条において外国判決の執行力は認められない旨の規定があり、実務上はこの規定を参照して、外国判決に基づいてインドネシアの裁判所に強制執行の申立てをしても、その申立てが認められることはないそうです。
インドネシアの裁判は賄賂の多寡で決まり、それ以外の国の裁判所の判決では執行できないとなると、中国等で良く行われていることですが、紛争解決の手段としては、訴訟を選択せず、あらかじめ契約書において仲裁を選択することが考えられます。
幸いインドネシアは、「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」いわゆるニューヨーク条約の加盟国であり、第三国の仲裁判断も執行されます。

とは、言い切れないところが恐ろしい(笑)そうです。

確かに、インドネシアは、ニューヨーク条約の加盟国ではありますが、第三国の仲裁判断をインドネシアの裁判所に持ち込み、いざ執行するという段階になると、仲裁手続きに瑕疵がある等の理由で執行されないことがよくあるそうです。
もちろん、本当に仲裁手続きに瑕疵があるというわけではなく、相手方が裁判官に何ルピアかは分かりませんが、積んでいるということが真相だとか。。。

負けじと、日本企業も裁判官に賄賂を渡して、勝ちにこだわると、何故か日本企業は汚職の罪でかなり重い刑事罰の対象になるのだとか(笑)。
って、笑えませんね~。

さて、他のASENAN諸国はというと、近時日本企業の投資熱が高いベトナム。
この国の法意識は、日本とはまったく異なるようです。
例えば、法令自体の整備も、またその運用自体にも不備があるそうです。最近、労働法は改正されたのに、未だその下位法規である各種政令がまだ改正されておらず、良く分からないけど、そのまま古い政令を適用しているのだとか。
当然、当局も担当官や地域により、また現地の弁護士も、判例や当局のガイドラインといった十分な裏づけもないまま、皆さん好き勝手に解釈論を繰り広げるそうです(笑)。
もちろん、そんなんですから、確定的な解釈もないそうです。

さらに、法律に対する認識がかなり日本と違うようで、法律は、最低限の規制を加えるものではなく、むしろ法律になんらかの定めがないと、その事項については当事者が任意に合意できないと解釈される傾向があり、そのような認識を持った現地の弁護士が契約交渉に登場すると、交渉が難航してしまい苦労するとか。
でも、それは現地の弁護士の質が低いとか、そういくことでは全くなく、裁判になると裁判官も同様の解釈指針をとる傾向が強いそうです。
つまり、法律にそのような規定はないので、それと異なる契約条項は無効!!
みたいな判断がなされるそうです。
また、法律に規定がある場合、その法律が強行法規なのか任意法規なのか、その区別があいまいで、日本人の法律家の認識に比べると、ベトナムの法曹は強行法規と考えることが多いということです。

そして、やはり、ベトナムでも未だ汚職が多いようで、賄賂がないと話が先に進まないことが多いそうです。
もちろん、インドネシアと同様に、日本人ないし日本企業が賄賂を使った日には、何故か、日本企業だけが犯罪に問われる傾向が強いとか(苦笑)。

ちなみに、よく見る資料かも知れませんが、腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index, CPI)というものがあります。これは、トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が、1995年以来毎年公開しているもので、公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識されているのか、その度合を国際比較し、国別にランキングしたものです。
ASEAN+αの2012年のランキングは、以下のとおりです。

5 Singapore
14 Hong Kong
17 Japan
37 Taiwan
45 Korea (South)
46 Brunei
54 Malaysia
80 China
88 Thailand
94 India
105 Philippines
118 Indonesia
123 Vietnam
157 Cambodia
160 Laos
172 Myanmar

このランキングがどれくらいアジアの文化を尊重しているかとかいう話はさておき、これまでのASEAN諸国の法律に関する認識とこの汚職ランキングを踏まえての、チャイナ・プラス・ワンの感想ですが。。。


中国の方がましかも(笑)


冗談はさておき(いやいや、半分は冗談でですが、半分は本気です。。。)、当たり前のことですが、その国の文化や国民意識が法律を形成している以上、日本の法曹の常識は、ASEAN諸国の非常識となっても何らおかしなことではありません。
ASEAN諸国における海外進出でなかなか上手くいかないと嘆く日本企業は、何か勘違いしているのかもしれませんね。
私自身は、まだASEAN諸国の法務実務を経験したことはないので、偉そうなことは言えませんが。。。

そうそう、
「郷に入りては而ち郷に随い、俗に入りては而ち俗に随う」
なんて言葉、日本人は忘れてしまったのか、それとも自分の都合の良いときだけ使っているのでしょうかね。