今月も定期購読しているBUSINESS LAW JOURNAL(ビジネスロー・ジャーナル)2013年 04月号の記事から独断でお勧め記事を一つ選びました。
それは、第1特集の『国内契約における英米型条項の使い方』です。


その中でも、森・濱田松本法律事務所の青山大樹弁護士と湯田聡弁護士の「完全合意条項の機能と効果」は、このところ疑問に思っていたことでもあったため、個人的にタイムリーで大変ありがたい 記事で、今回のお勧めの記事でもあります。

経済のグローバル化に伴って、法務の業務内容もグローバル化しており、契約レビューも様々な形でグローバル化していると思います。
これまでも外資系企業の日本法人との契約において、英米法系の契約書を和訳しただけという、ちょっと不思議な日本語の契約書をレビューすることは良くありましたが、最近は、日本企業との契約においても、英米法系の法概念を基に作られた条項を見かけることが増えてきました。
その中でも、気になっていたのが「完全合意条項」です。
具体的に何が気になっていたかというと、日本法を準拠法とした場合の日本の裁判所における「完全合意条項の効果」です。

というのも私の経験上、多くの日本企業の事業部には契約交渉が苦手な方が多いように思います(笑)。
どのように苦手かという、『契約書とは交渉の結果お互いが合意した取引の内容を書面に落とし込むもの』という意識が希薄であり、『それなりの形の書面、すなわち、契約書とか覚書という名前のそれらしい書面が取り交わせれば(取引実態とずれていても)良い』という感覚をたぶんに持っている、ということです。
ちょっと極端に書きましたが、それほど的外れな認識ではないと思います。
これによって、必要な条件が合意できていない、将来起こりうる可能性のある出来事について合意できていない、仮に、(担当者間で)合意できていても、それを書面(契約書)に落としこめていない。。。ということがよく起こっていると思います。

こんな状況において、契約書面に「完全合意条項」があり、そして訴訟になった場合、この条項はどのように裁判所に理解され、そしてどのように機能するのか。そもそも、書面上に現れていない合意を大切にする、日本人同士の取引において、「完全合意条項」が機能するのか。。。
特に、「完全合意条項」がある契約書において、口頭の約束が契約文言の解釈にどのような影響を与えるのか、それとも与えないのか、という点ですね。
日本の裁判所は、取引実態と契約書の文言が乖離している場合に、よく『「当事者の合理的意思解釈」として、こういった合意がなされたのだから、この契約文言は当事者の合理的意思解釈にあった形で解釈されるべき』という判断をしていると思いますが、このような実務がどのように変化していくのか?という点に興味があります。

詳細は、是非、今回お勧めのこの記事を読んでいただきたいと思いますが、今回の記事が秀逸なのは、英米法系、特にアメリカにおける「完全合意条項」の単なる説明・紹介ではなく、実際に、日本法を契約準拠法とする契約書の「完全合意条項」が日本の裁判所によって、どのように理解され、判断されたかという点について解説がなされている点です。
簡単に結論を言ってしまうと、日本の裁判所は、「完全合意条項」の理解の仕方も、その適用も裁判所によって異なり、意図していたような効果が得られないことがある、というところでしょうか。さらに、上記を前提に、実務上の留意点がまとめられています。
そして、私の疑問は、P41の注2やP43の注4に示唆されており、今後の解決の方向性も見えてきた気がしています。
詳細は、是非、本誌をご覧ください。
もちろん、私は、レクシスネクシス・ジャパンさんの回し者ではありません(笑)。
単に購読者数が伸びると、誌面が充実するかなと思っているだけです。