紀伊国屋書店の法律書コーナーに平積みされていて、ぱらぱらと内容を見たところ面白そうだったので購入してみました。
何が面白そうだったかというと、


この本、法的三段論法の説明から始まっているのです。
しかも、単に法的三段論法とは何か?という説明をするだけでなく、裸の価値判断と法的三段論法を対比させて、法的三段論法の優れた点を力説しています。

そして、法的三段論法は、法的思考、すなわち法律家の頭の使い方の重要な要素であるとしつつも、それがすべてではないとして、

『法源と向かい合って、自分の考え方を相対化する』

ということの重要性について説明をします。

久々に、こういった本を読んで、面白いと素直に思ってしまうのは、私が法律オタクだからではなく(苦笑)、企業法務で実務ばかりしていて、狭くなってしまった視野を広げてくれると思えるからです(笑)。

さて、これだけ聞くと、かなり硬い本だと思われるかもしれませんが、キヨズミ准教授とキタムラくんという高校生の会話にワタベ先生というスパイスを効かせて、軽快なテンポで話は進んでいきます。
たとえば、高校の文化祭を題材にしたChapter4では、キタムラくんのクラスの企画が憲法9条をモチーフにした文化祭実行委員会規則9条に反するとして、文化祭実行委員会から中止の要請を受けます。
この文化祭実行委員会規則9条の解釈を行っていくところなどは、高校生はもちろんのこと、これまで法律に興味がなく、実際とは異なる様々な法律に関するイメージを持った社会人にも、法律というものがどのようなものであるかを知ってもらうにはとても良い本だと思います。
(その後、大学の法学部の良さをしっかりとアピールするあたり、著者の木村草太さんは、なかなかお茶目な准教授ですが。。。)

最後に、本書の中で著者は「法解釈というのは、絶対的な正解がなくて、とてもクリエイティブな作業」といっています。
これは、著者の本業が学者だからという面もあると思いますが、私自身は、法律実務でもクリエイティブな作業は必要だと思っています。
実務での判例の大切さは言うまでもありませんが、判例がない領域もたくさんあります。
特に私が実務で取り扱うことの多いIT系は、常に新しい問題が発生していて、そこには判例はもちろん裁判例すらないような問題が多くあります。
それは悩ましくもあり、答えがないことの辛さもあるのですが、やはりこういった問題を考えるときが一番楽しくもあります。
また、複雑な(変わった?)ビジネススキームを契約書に落とし込むときも、クリエイティブな仕事をしていると思います。
そうそう、先日のこんな事例とかも。。。(苦笑)


<評価> ☆☆☆☆
(大学生から社会人まで、法学の入門書として。)